桜並木口
□人間とは。
1ページ/3ページ
「っくちょんっっ。」
こしこし。
やはり、もう少しで冬が来る。
洗濯の時、感じる水の冷たさ。
なんだかいつもと変わらない洗濯物の数が倍に感じる。
人間とはそう云うものだ。
冷水の肌を刺す痛さに早く終わらせてしまおうと、気合いを入れた…。
!?
ふわっ。
「冷たぃっ。」
桶の中に自分以外の手が当たる。
「薫殿!」
「早く終わらしちゃいましょ!」
ふわりと笑いながら薫殿が言う。
「駄目でござるよ!風邪をひいてしまうでござ…っくちょんっ。」
言い終わらない内に自ら出たくしゃみ。
「剣心がね!」
にこっと水まで暖かくなりそうな笑顔で薫殿が言う。
「おろっ。」
格好つかないでござるなぁ。。。
諦めて二人で洗い始める。
時折、他愛もない会話を交しすぐ片付いた洗濯物。
手など冷たさを感じず、このままの時間が続けばいいと願ってしまう…全く人間とは勝手な生き物でござる。。。
桶の底が見えた時に少し淋しさを感じた。
が。
「薫殿、もうこちらは終わるからもう大丈夫でござる。ありがとう。」
もう冷たさで赤くなってしまった薫殿の手に申し訳さを感じながら言った。
「じゃあ、私、お風呂焚いてくるね!」
そう言って立ち上がった薫殿、拙者は洗濯の手をやすめなかった。