宝物(ブック)
□いつまでも
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「変な依頼?」
「ああ。魔物の討伐依頼な。俺とお前をご指名だぜ」
「なぜ僕とお前なんだ」
「さぁな」
ユーリは興味なさそうに手元のパフェに視線を落とした。僕はユーリの作ったプリンを食べながら一枚の紙を受け取る。その紙には依頼内容が書かれていて、ユーリの言った通り僕とユーリを指名していた。…依頼内容から見るに僕一人でも十分倒せるレベルの魔物の討伐だ。なぜ僕とユーリを指名してきたのだろうか。
「とりあえず、これ食ったら行こうぜ」
「…ああ」
僕は頷いて、プリンを頬張った。
「よっと…」
ユーリが向かってきた魔物を切り捨てた。
「これで全部か?」
「ああ。…お疲れさん」
「ふん。これくらい、どうってことない」
辺りには魔物の死体が転がっている。僕は剣についた体液を振り払い鞘に収めた。…魔物はやっぱり弱くて、一時間もしないうちに目標の数を倒せた。
「楽勝だったな」
「…そうだな」
笑って帰路につこうとするユーリ。僕はユーリを見ながら小さな違和感を感じていた。気配が消えていないのだ。魔物とは違う、何か嫌な気配が、僕らから少し離れた場所にある。
「どうかしたのか?」
「いや…何でもない」
気のせいだと考えて僕もユーリの後を追った。…いや、追おうとした。
「!リオン!!」
どん、と突き飛ばされて僕は倒れ込んだ。急いで起き上がってユーリを見ると、そこには…
「ぐ、ぅ…がはっ…!」
腹を貫かれたユーリがいた。
「ユー、リ…?」
震える声でユーリを呼んだ。
それに返事はなく、僕は剣を抜いて魔物と思われる生物に切りかかる。
…そいつはあっさりと僕に切られ、光を放ち消滅した。なんともあっけなかった。
「ユーリ!」
「リオ…ン、怪我、ないか…?」
血を流し苦しそうにしているユーリを抱きしめた。僕は怪我なんかしていないのに、ユーリは僕を心配する。
「バカ!どうして僕を庇った!?」
「はは、なんで、だろうな…」
青白い顔でユーリは笑った。僕はじわじわと瞳に涙がたまるのがわかって、泣かないように唇を噛み締めた。
「泣く、なよ…」
「泣いてなんか…!」
「わりぃ、リオン。いつまでも──」
はっきりとした口調でユーリは言った。その瞬間は、まるで時が止まったかのように思えた。
愛してる
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