宝物(ブック)

□写らない鏡
1ページ/2ページ




何もかも悟った風をして。

僕より半歩先を行って。


何もかもその手に持っている。


僕の迷いも葛藤も、そんなこと、って、笑い飛ばして。



それが、心地いい時もある。
否、あった。


今となっては、無意味なこと。



「っ、!・・・!」



吊り上げた手が、白く変色してきた。

力を入れるのは諦めたのかい?


「貴様、自分が何をしているのかわかっているのか!?」


口だけは達者だね。

何故か、笑えた。


「拉致、監禁・・・カルバンゾでは懲役刑だ。」


だから、どうしたんだい?
笑いかけてやると、反抗的な目から、戸惑いの目に変わる。


何故。
どうして。


はは、決まっているだろう?


「僕はね。ユーリの親友で、一番の理解者なんだ。」


だからね。


「君がユーリの隣にいるのが。」



護身用の短剣。

切っ先を服に絡める。


「赦せないんだ。」


張り詰めた繊維が破れ去る。



白かった掌に力が入って、鎖が音を立てた。
が、痛くも痒くもない。

もちろん、君は痛いだろうけど。






「ぐ、・・・っ」


後孔に指を突き立てると、色気のない声が漏れた。


「狭いね。これがイイのかな?」


続けて、もう一本。

また、呻くような声。



「やめ、ろ、っ・・・!」


そんな目で見たって、意味ないんだけど。



「僕はね。君のことは好きじゃないんだ。あのユーリが執着する理由が知りたいだけなんだよ。」



ヤッパリ、カラダ?



慣らすのもそこそこに。


指を抜いて、起ち上がった其れを入れ込んだ。



――・・・鳴き声は及第点かな。





「ユーリ・・・っ!」


混乱した?


いない彼の名前を叫んだ。




意味のないこと。


一生、ここで飼ってあげる。


君が壊れるときまで。



若しくは、僕が壊れてしまうまで。





――あれ?


今、何時だったかな?
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ