リクエスト小説
□夢喰い
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「さらばだ、シャル!」
神の眼にシャルティエを突き刺して、面と向かって別れを告げたのが、ほんの数日前のことだった。
そして現代に戻り、皆の心にゆとりが持てた時だった、ジューダスはついついシャルティエがいるつもりでいつものように話しかけてしまう。
しかし、その言葉に相槌が返ってくるわけでもない。
その度に、喪失感が大きくなる。
分かってはいたが、誰よりも側にいて、大きな存在だったがために、彼がいないのがこんなにも苦しいとは思わなかった。
その日の夜、ジューダスは夢を見た。
とても幸せな夢だった。
『シャル、聞いてくれ。カイルが……』
ジューダスは夢に出てくるシャルティエに、いつものように話出す。
シャルティエが何かを話す事は無かったが、ジューダスはそれだけで良かった。
しかしその分、眠りから覚めた時の喪失感は、以前の比ではなかった。
それでも、夜になればシャルティエは出てきた。
そんな日々が続けば、ジューダスも次第に夢と現実との境が不透明になっていく。
『少しの間行ってくる』
いつも最期にそれだけを言って、眠りから覚める。
だから、ジューダスは知らない。
夢の中のシャルティエが、いつも最期には悲しい表情を浮かべていることに。
そんなある日のことだった。
カイルとリアラが心配そうな表情で、ジューダスの元にやってきた。
「どうかしたのか?」
「えっと……」
「その、ジューダス…あの、ね?」
歯切れの悪い2人に、少し苛立ちを覚える。
「はっきりと言え」
「カイル…」
リアラに後押しされ、カイルが思いきって切り出す。
「ジューダス、顔色悪いけど大丈夫?どっか悪いなら、無理しないでよ」
初め何を言われたのかが分からなかった。
─顔色が悪い?─
急に何を言い出したのかと思えば、そんなことだった。
ジューダスからしてみれば、体は健康そのものであり、どこも悪くなかった。
時々体調を崩しても、いつもはばれないように振舞っている。
「気のせいだろ。特に何ともないが?」
ジューダスが何かを隠している風にも見えないため、カイルとリアラは2人で首を傾げた。
「なら、いいんだけど…」
「ジューダスはいつも無理するから、何かある前には言ってよ!俺じゃ頼りないかもしれないけど…」
2人があまりにも心配顔なので、ジューダスは大人しく頷いた。
それでもジューダスが夢のことを彼らに話すことはしない。
そして、その日の夜も夢を見た。
『シャル、あいつらがおかしなこと言うんだ。僕の体調が悪いんじゃないかって。僕は至って健康だ。むしろ、調子がいいくらいだ』
それでも言葉が返ってくることはない。
以前ならそれでも我慢できた、こう毎日同じ夢を見ると、シャルティエからも何か話して欲しいと思うようになる。
だから、夢を見ても何の返答のないシャルティエに別の寂しさがこみ上げてくる。
『黙りっぱなしのシャルは、どこか気持ち悪いな』
少し皮肉めいた言葉を投げかけてみるが、シャルティエが言葉を発することはない。
それに居心地の悪さを感じ始め、この夢から早く覚めないかと思うが、自分ではどうしようも出来ない。
現実の自分が自然に起きるまでは、ジューダスはこの夢の世界に閉じこめられたままだった。
また、朝がきて、ジューダスは目を覚ました。
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