リクエスト小説
□一時の休息
2ページ/6ページ
そして現在、何だかんだで三人仲良く温泉に浸かっている。
「………どうして」
ぶつぶつと文句を言うリオンは、2人から少し距離を取って恨めしげに2人を見据える。
それに2人は苦笑しながらも、今浸かってる露天風呂を楽しんでいた。
「気持ちいいな」
「景色もいいしな」
2人の会話には入らないが、リオンも同意見だった。
温泉に浸かっているということもあり、リオンの表情が年相応の表情に戻っている。
「へぇ〜、あんな顔も出来るんだな」
「そうだな。あの方がずっといいな!」
小声で話す2人の会話は、もちろんリオンには届いてはいない。
「あぁやってしてると幼いよな」
「うん、そうだな。それに可愛い」
「お!実はお前もリオンを狙ってたりするのか?」
「なっ……?!じ、実はって何だよ!?」
湯に浸かってるとは別に顔を赤くして慌てるアスベルをユーリが笑う。
「そう慌てんなって!てっきり、フレンと似たタイプだから案外そっち方面は疎いのかと思っただけだ」
「ぅっ……そ、そりゃぁ、俺だって…」
顔を赤くさせたまま、少し視線をそらして、顔半分を湯に浸けてぶつぶつと呟く。
「そう拗ねるなよ。それにしても、お前も倍率の高い奴を選んだもんだな。まぁ、俺も人のこと言えないけど…」
その言葉にアスベルが意外そうな表情でユーリを見た。
「んだよ、人を変な目で見るんじゃねーよ」
「あ、すまない。ユーリって、そういうの興味無いと思ってたから。それに、そういう人がいても言わなさそうだし」
「ま、そうなんだがな……ただ、気が向いただけだ」
照れ隠しからなのか、少し不満そうな表情をし、指で頬を掻いた。
そんな対象にされているとは知らない当のリオンはというと、外の景色に魅入っている。
「水面から上だけ見ると女だよな」
「さすがにそれは失礼だと思うぞ」
アスベルは口ではそう言いつつも、見た目の問題ならユーリも人のことは言えないのではないかと思っている。
特に後ろから見れば、女性だ。
温泉に浸かるために、髪が落ちない様に上で丁寧に結ってある。
知らない人が見たら、一瞬女性に見間違えてもおかしくないはずだ。
後が怖いので、そんなことは口が裂けてもアスベルは絶対に言わないだろう。
「なぁ、アスベル」
「???」
「この際せっかくだし、リオンと愉しまないか?」
「楽しむって?」
互いの言葉のニュアンスが違うので、ユーリの言う《たのしむ》がアスベルには伝わっていないようだ。
それを伝えるにしても、普通に声に出して言うことも憚れるのでユーリはアスベルにそっと耳打ちした。
最初は普通に相槌を打っていたアスベルだったが、次第に顔が赤くなっていき慌てふためく。
「そ、そんなことしたら、絶対殺される!」
「大丈夫だって!」
自信満々の顔をするユーリに、その自信はどこから来るのかと問いただしたくなる。
「それにそうでもしないと、あいつ気が付かないと思うぞ」
視線をリオンに向けた。
しかし、そこにはリオンの姿は無かった。
「あれ?リオンは?」
2人の後方からガラガラと戸の開く音がした。
そちらに視線をやれば、丁度リオンが脱衣所に向かっている所だった。
「いつの間に…」
「さぁ?」
いつ上がったのかも気付かないほど、2人は夢中だったようだ。
.