リクエスト小説
□惨事後の甘い蜂蜜
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あの悲惨な一日を過ぎてから、ユーリには大きな悩みが一つあった。
ゼロスやレイヴンの対応には、いっそう厳しくなった。
むしろ、日常からくるストレスをぶつけるほどだ。
仲のいいフレンに対しては今までどおり、何ら変わりは無い。
そう、ユーリの悩みというのは、今目の前にいる黒髪の小さな後輩。
あの日に同じ目に遭ってしまった後輩だ。
「なぁ、リオン。もう少し、危機感を持ってくれないか?」
「何に対しての危機感だ?」
プリンを食べながら首を傾げる後輩・リオン。
あれ以来全くの警戒をしていないと言えば、嘘になる。
ゼロスやレイヴンはもちろん、あれだけ仲が良かったシャルティエにも厳しく当たっているのをユーリは目撃している。
何が困るかって、ユーリの前だけは以前より無防備なのだ。
媚薬を盛られて、あんなことをされていたとしても、リオンのあの姿はユーリの目にも充分するぎるほど焼き付いているのだ。
以前は、甘党の仲間の可愛い後輩だった。
それは今も変わらない。
だが、あの日以来、ユーリはリオンに悪戯したくて仕方がないのだ。
それに突然過ぎて、リオン自身も良く分かっていなかったりする。
本人は理解しているみたいだが、ユーリからすれば分かっていないのだ。
だから、一つ一つ手取り足とり教え込みたいという気持ちがある。
そんなユーリの気持ちも知らず、リオンは幸せそうにプリンを食べている。
「ユーリも食べるか?」
無意識にスプーンに乗ったプリンを近づけてくる。
「じゃあ……んっ」
もぐもぐと咀嚼する中、リオンを垣間見る。
相変わらず、プリンに夢中だ。
それがまた可愛くて堪らない。
(俺って、こんな変態だったか?)
「ユーリ、どうかしたのか?自分が作ったのに、口に合わなかったのか?」
「何でもねーよ。さ、帰ろうぜ?」
リオンの頭をぐしゃぐしゃっと撫でる。
「子供扱いするな」
口ではそう言うが、リオンの顔はほんのり赤かった。
それをユーリは知らない。
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