リクエスト小説
□予知夢
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『坊ちゃん、坊ちゃんは予知夢って信じます?』
任務の帰還途中に唐突にそんなことを切り出したシャルティエに、リオンはきょとんとしている。
『深い意味はないんですけど……、坊ちゃんは信じるのかな〜って思っただけです』
「急に何を言い出したかと思えば……」
いつもの思いつきだと分かった途端、リオンは呆れたように嘆息した。
だから、自分の質問に答えてくれないだろうとシャルティエが諦めかけたときだった。
「予知夢、か……僕なら、信じないだろうな」
『そうですか……坊ちゃんらしいですね!』
いつもの明るい声なのだが、どこか無理しているような声音でもある。
それを不思議に思うが、もう城に着き、任務の報告をしなければならないのでその話はそれっきりとなった。
『(あれは確かに坊ちゃんだった)』
リオンが寝ている間は機能を停止しており、シャルティエは寝ているわけでは無いのだが、時々、昔の記憶がその間に鮮明に甦ったりする事がある。
今回も同じ現象だったが、それは自分のオリジナルが生きていた千年前の記憶ではなく、知らない記憶。
それを記憶と言っていいのかは分からないが、それには確かにリオンがいたのだ。
リオンとの今までの記憶を思い出すも、その時見た映像は全く記憶に無いものだった。
なら、それは夢なのだろう。
ただ、これまで夢を見た事がなかった。
その夢は、機能を始動してからも忘れることなく、脳裏に鮮明に焼き付けられていた。
その夢は、どこか暗い洞窟の中。
そこに坊ちゃんと誰か分からないけど何人か人がいた。
何を話しているかなんて分からないけど、坊ちゃんとその人たちが戦っていた。
そして、その人たちを助けるために1人洞窟に残る坊ちゃん。
それは夢にしてはあまりにもリアリティがあり過ぎて、一抹の不安を抱いた。
もしこれが予知夢なら、いつか坊ちゃんに訪れるのではないか?
これが現実となったら、坊ちゃんはどうなるのか?
考えたらきりがない程、不安が押し寄せて、思わず尋ねていた。
ただの夢、そう信じたいけれど、それをただの夢だと思えない自分がいた。
だから、坊ちゃんを心配させまいと普段みたいに笑って見せたのだが、鋭い坊ちゃんのことだからきっと気付いているかもしれない。
『(坊ちゃん、これはただの夢ですよね?)』
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