企画小説
□募る想い
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こんな奴は初めてだった。
自分の身を顧みずに、他人を助けるなんて考えられない。
その後も、仲間だからと言って笑った。
馬鹿で、能天気で、図々しくて、馴れ馴れしいのに、どこか目が離せなかった。
気が付けばずっと彼を追っていた。
カルビオラの一件が終わり、チェリクへ戻る時、一日では戻れないので、野宿をした。
その日は、リオンが見張りを担当した。
皆が寝静まった頃、寝ていたはずのスタンが目を覚ました。
「どうした、スタン?こんな夜中に目を覚ますとか珍しいな」
「あ、いや…目が覚めただけなんだ」
「そうか…」
会話はそれで途切れた。
2人はバチバチと焚かれる火をただ眺めるだけだった。
スタンは起きたものの、リオンとこうして2人っきりになるのは初めてだった。
何だかんだで、2人っきりになる機会が無かった。
妙に緊張してしまい、よく喋るスタンも今は黙っていた。
ちらりと横に座るリオンを盗み見ると、息を呑んだ。
火に照らされたリオンの表情がどこか儚くて、消えてしまいそうなイメージを与えたが、それが綺麗だと思った。
スタンは思わず見惚れてしまった。
「スタン、僕の顔に何か付いているのか?」
「あ、ごめん。そうじゃないんだ」
「変な奴だな。スタン、どうしてお前はすぐ他人を信じられる?」
「ん〜、俺は人を疑いたくないよ。いつもどこかで人を疑ってたら、悲しいだろ?だから、俺は騙すぐらいなら騙される方がいい」
真っ直ぐな瞳には、一片の曇りも無かった。
「だから、俺はこれからもずっとリオンを信じてるからな!」
「………そうか。本当に変な奴だなお前は」
無意識なのだろう、そう言って微笑んだリオンにスタンの胸が高鳴った。
「俺、もっとリオンのこと知りたい!」
「僕を?……知ってどうするんだ?」
「どうって言われても……俺はリオンと仲良くなりたいし、リオンが何を思って、何を感じているのかも知りたいんだ」
「……………」
「俺、リオンが好きだからさっ!」
リオンは目を見開いた。
そして、ふわりと微笑んだ。
それが年相応で、スタンはもっとリオンの色んな表情が見たいと思った。
そして、その日を境に夜2人になるとスタンだけでなく、リオンの方からも歩み寄ってくれるようになった。
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