企画小説
□独占欲
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「んっ……、ここはどこだ?」
リオンが目を覚ませば、辺りは真っ暗だった。
少し埃っぽいとも感じる。
身体を動かせば、ジャラッと近くで何か重たい音がした。
体は起こせるが、それ以上の動きが制限されて思うように動けない。
「……鎖?」
手首と足首に冷たい感触がする。
暗がりの中でも、その感触を確かめれば鉄製の手枷が嵌められ、その先には鎖が連なっている。
「な、ん…で?」
気を失う前の記憶を手繰り寄せる。
しかし、何故か何も思い出せないでいた。
そんな所に、どこかで扉の開く音がした。
その扉は思ったほど遠くにはなく、空けられた所から光が差し込む。
暗闇に慣れた目には光は毒で、目を眇める。
「………リオン」
「ス、タン?スタンなのか?!」
警戒していたため、入って来たのが知った人物であることにリオンは少し安堵した。
「スタン、お前は大丈夫だったのか?……不覚にも、何者かに捕まってしまった。手枷を嵌められ、動けないんだ」
いつになく饒舌なリオンが焦っているのが見て分かるため、スタンは可笑しくてしかたなかった。
スタンはゆっくりとリオンに近づくと、その手を取った。
「スタン……?」
スタンが手枷を撫でる。
その行為が不思議で、リオンはスタンの様子を窺う。
「ねぇ、リオン。こんな状態になったの、まだ思い出せない?」
「お前は何か知っているのか?」
「知ってるも何も、リオンをここに繋いだのは俺だよ?」
「何を言って……」
「リオンが悪いんだよ?俺を見ないから…」
顔近づけてきたスタンの瞳が、あの明るい色ではなく、どこか暗く、リオンは悪寒がした。
「いつもそうだよね。俺だけが必死で、リオンは何の興味も持ってくれない」
どこか様子の可笑しいスタンに、リオンは少しずつ後ずさる。
「どうしたの、リオン?俺が、怖い?」
怖い。
確かに、そう思った。
感じたことの無い恐怖を感じる。
「ねぇ、早く思い出して」
リオンは必死で、ここに連れてこられる前の記憶を呼び寄せる。
思い出せと、頭の中で警鐘が鳴り響く。
でも、思い出せない。
それがさらにリオンに焦りを生ませる。
「やっぱり、思い出せないんだ。いいよ、思い出さなくて。身体に思い出させるから……」
とん、と肩を押され、どこかの上に押し倒された。
抵抗しようにも両手両足を拘束されている。
それ以前に、スタンの態度がリオンに抵抗というものをさせないでいた。
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