長編3
□[
1ページ/5ページ
これから戦争が本格化になるため、アッシュ率いる第三部隊、フレン率いる第四部隊はヒューゴの隊と共に南の基地へと向かった。
スタン率いる第二部隊は、北の基地へと向かう。
リオンと離れた空白の時間を埋めようと思った最中に北の基地へと移動になり、ジューダスは内心苛立っていた。
本当は、リオンと共に戦いたい。
リオンと共にありたい。
あの不思議な夢の中で聞いたリオンの声に後ろ髪を引かれつつも、命令は命令なので北の基地へと向かうしかなかった。
道中、カイルが何かを話しかけてきてはいたが、ジューダスの耳には全く入ってはこなかった。
「ねぇ、ジューダスってば!!」
「っ?!………なんだ、カイルか。どうした?」
「もう!どうしたじゃないよ!さっきからずっと呼んでるのに!」
カイルが頬を膨らませながら、訴える。
「すまなかった。それで、何だ?」
「スタンさんがジューダスを呼んできて欲しいって言ってたよ」
「スタンが?また、何故?」
「リオンのことじゃないかな?よくは分からないけど」
先頭を歩く金髪をジューダスは疑い深い眼差しで窺う。
「分かった」
少し後方を歩いていたジューダスは、速足でスタンの横へと並ぶ。
「あ、ジューダス!もう、遅いじゃないか〜待ちくたびれたよ!」
反応がカイルとそっくりだ。
それでもジューダスも悪びれる様子は全くない。
「で、用件は何だ?手短に頼む」
「特に無いよ?折角、久々にジューダスと再会したから、ゆっくりと話でもしようかと思っただけなんだけど……」
スタンはぼさぼさの頭を掻きながらそう言う。
少々身構えていた所もあり、拍子抜けである。
「僕は別にお前と話す事は無い」
「え〜そう言うなよ!」
「僕と話すと、リオンと話した気になるからか?」
ジューダスの口から出た言葉に、スタンの顔が一瞬驚愕するも、すぐ怒りの含んだ表情になった。
「何で、そんな事言うんだ?リオンはリオン、ジューダスはジューダスだろ?いくら俺でも、そんな事するわけないだろ」
「………すまない。そう言う意味で言ったわけじゃない。少し、苛立っているんだ」
「リオンと離れたから、だろ?俺なんか、もう何十回も経験してるよ。第2部隊は、第1部隊と……いや、リオンと同じ戦場になることはない」
「それはどういう意味だ?」
スタンは寂しそうに、彼の知る限りの基地の配置と重要性、自分たちの役目を話した。
「本拠地と南の基地が落とされれば、俺たちの軍は負け。北の基地は、本拠地が挟撃されないための砦に過ぎないんだ」
「砦、か」
「そうなんだ。砦に誰もいないと不味いだろ?いつ来るか分からない敵を待ち続けるんだ。来たとしても、大したことはないよ」
スタンはこの配備には何か作為的なものを感じると言う。
だが、それを問うことなど彼らには許されない。
「リオン、元気だった?」
「元気……とは言い難いな。スタンは、リオンがあんな風になった原因を知っているのか?」
「知らないわけでもないけど、どこまで正しいかは分からない。リオンの事になると、どこまで情報が正確か味方の兵でも分からないんだよな」
「どういうことだ?詳しく聞かせろ」
スタンは後方を確認すると、皆と少し距離をとり、先程より少し声の大きさを小さくする。
「リオンの情報に至っては、上が徹底的に管理してるんだ。それに、ヒューゴさんもフィンレイさんも何も教えてくれない。リオンに至っては、会ってもくれない」
そう言われて、ヒューゴやフィンレイ、リオンの様子を思い出す。
リオンと一番近い存在であるはずのジューダスにさえ、口を閉ざしていた。
「リオンが変わったのって、隊長になってかららしいんだ。その時に何があったのか、探ってはみたんだけど、何も分からない」
「上層部が何かを隠している、ということか?」
「恐らく。でも、俺が今気がかりなのは、ユーリ」
「ユーリ?どうしてそこでユーリの名が出てくるんだ?」
リオンのことで、どうしてユーリの名が出てくるのか、それは誰しもが疑問に思うだろう。
ただそれは、今年入隊したものに限る。
「これまで第1部隊に部隊長がいなかったのは知ってるだろう?それが、突如、決まった。それが可笑しいんだよな〜」
「どう可笑しいんだ?」
「そこまでは分からないけど…、こう何と言うか…ん〜、わざと任命したような?それが上層部なのかリオンの意思なのかは分からないけど」
ジューダスはユーリとの面識は養成学校の数カ月のみである。
彼の実力はジューダスも認めている。
だから、選ばれても不思議ではない。
しかし、スタンにそう言われてみれば、不思議な話でもある。
今までいなかった部隊長を突如任命したということは、何かあるということだろう。
それが上層部が仕向けた事なら、リオンの監視役。
リオンの意思だとしたら、部隊長をつけなければならない理由があるということだ。
それもユーリでなければならない理由が。
(ユーリ・ローウェル、か。奴も詳しく探る必要があるな)
.