長編3
□V
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爆音が響き、会議内が騒然としている中、ジューダスたちが居る待機室でも同様に騒然としていた。
配属したばかりの少年兵も多く、出撃命令がいつ出るのかとそわそわしている。
一方で、これまでに配属されている先輩の少年兵たちは落ち着いている。
「ねぇ、ジューダス。どうして何も命令が出ないの?」
「分からない。だが、あいつらは何か知っているみたいだな」
ジューダスが向けた視線の先には、落ち着きを払っている少年兵たち。
ジューダスはその中でも一番派手な少年兵に目を付けた。
赤い長い髪はウェーブし、額には白いバンダナ。
端正な顔立ちに浮かぶ表情は、皮肉めいた笑み。
彼が放つ雰囲気は、ここにいる誰よりも突出し、かなりの実力の持ち主だということが窺える。
そんな彼に視線を送っていると、向こうも気がついたのか人懐っこい笑みを浮かべジューダスたちの方に歩み寄って来た。
「そんなに見られちゃ、俺様照れちまうぜハニー」
ぐっとジューダスの腰を抱こうとする手を、ジューダスは跳ねのける。
「つれねーな。ちょっとした挨拶だよ、ジューダスちゃん♪」
「ふざけるな」
先程の姿とは想像つかないほどお茶らけた人物に、ジューダスは不快感を露わにする。
「ジュ、ジューダスι」
「そっちはスタンとそっくりだが、兄弟か何かなのかカイル君?」
今度はカイルに向けて笑顔を見せる。
「スタンさんとは従兄弟です!えっと、あなたは?」
「俺様はゼロス。ゼロス・ワイルダー」
カイルとゼロスは軽く握手を交わした。
「それで、ハニーは俺様に何か聞きたい事があるんだろ?」
ニコニコと笑ってはいるが、目は冷たい印象を与える。
その冷めた目はジューダス自身というよりは、彼を通して誰かを見ているようでもある。
「何故、命令が出されない?」
「知らなくて当然だよな。配属されてほんの数日だし〜遅かれ速かれ知る事実だ」
「さっさと言え」
「へいへい………俺様たちというより、どこの隊にも言えることだが、基本的に命令が下ることはほとんどない」
真剣な表情で語るゼロスに、ジューダスもカイルも訝しむ。
「さっき知らされた情報によると、敵さんは一部隊丸々だ。それぐらいなら、部隊が動くことはまず無い」
「何が言いたい?」
「要するに、全て隊長さんがお片づけしてくれるってこと」
「隊長って………」
ゼロスの言葉にいまいちピンッと来ない2人。
それは彼らの話に聞き耳を立てている配属されたばかりの少年兵も同じである。
「だ〜か〜ら、隊長ことリオン・マグナスの単独任務ってことだ」
ゼロスの言葉に一同は絶句した。
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