長編3

□Y
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まだ日も昇らぬ時刻。

ある部屋から荒い息とカタカタと何かが叩かれている音が微かにしている。



「…………っ、酷い!……僕が、いるのに……裏切った!………そんなこと、しない……これは、無理矢理、っ」



パソコンの画面を覗けば、教室でユーリがリオンにキスをしている映像が流れている。

会話は撮られていないようだが、2人の表情はよく撮れている。

それを見て、この部屋の主はイラついているのか、パソコンの縁を指で小刻みに叩いている。



「あんな奴にっ、………君は僕のモノだよ?………ねぇ、これって、酷い……裏切り…僕は、君が好きなのに!こんなにも、こんなにも、君だけを見ているのに!」


動画は、教室にリオンだけが取り残されている所で静止されている。

そっとリオンの輪郭をなぞる。



「君は、僕のために身を守っていたんじゃないの?なのに、あんなふざけた生徒会長に………、しかも、傷ついてる……やっぱり、君には僕しかいないよ」



パソコンとコードで繋がっている印刷機から、写真が次々と印刷されてくる。


それには先程のキスの現場やリオン単体、ユーリ単体など、動画の一部始終が印刷されている。


ユーリ単体の写真を一枚取りあげると、初めはゆっくりと、次第に荒々しく、憎しみを込めたかのように激しさを増しながら彼の顔を黒く塗りつぶしていく。



「君は僕のものだっ!渡さない……誰にも、君は僕だけを感じてればいいよ………っ、ああっ……ムカつく、嫌いっ、こいつ、邪魔っ!」


完全にユーリの顔が潰されても尚、塗りつぶしている。


キュッ、キュキュキュッとマジックで塗りつぶす音が、耳に障るほどの不協和音を奏で始めているが、部屋の主は気にしていない。


それどころかその音と同化し始めている。



「邪魔っ、邪魔っ……消えろっ、消えろ、消えろ消えろ消えろ……キエロッ!」



辺りにはマジック特有の匂いが充満している。

それがさらに部屋の主を狂わしていく。



「君も、僕以外に触れさせるなんて………お仕置きがいるね」


引き出しから小さな小瓶を取り出した。


その中には粘り気のある液体が、8分目まで入れらていた。


「ふふっ……僕からの贈り物だよ?…、ぁ、君ならきっと気にいってくれるよね?ふふっ…」


その小瓶を手紙とぐちゃぐちゃになったユーリの写真と共に封筒の中に入れた。



「君の反応が楽しみだな……ぁっ」






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