長編3
□U
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「ねぇ、昼休み僕たちと一緒に来てくれる?」
と、早速誘われたのは一限目が終わってすぐのことだった。
授業と授業の間の休みは5分しかなく、長話ができる程のものではないので、隊長の1人がリオンに言ってすぐに席に戻った。
戻ってからも、リオンは隊長たちの殺気を含んだ視線を浴びせられていた。
「………馬鹿共が」
「そういう言い方すると誤解されるよ?」
「僕は気にしない」
「………そういう所、似てるね」
まただ、とリオンは思った。
カイルは確実にリオンではなく、リオン通して誰かを見ている。
その誰かというのはリオンは痛いほどよく知っている。
それはリオンと双子で瓜二つの弟。
名はジューダス。
ジューダスは、先の戦争で死んでいる。
リオンとジューダスは双子で性格もそっくりだったが、友好関係だけは少し違っていた。
もちろん互いの友やその関係は把握しているが、深いところまでは知らない。
カイルはジューダスの戦友で、親友だった。
リオンはその程度の認識はしている。
ジューダスが死んだというのを直接見たのは、リオンだけ。
だから、カイルはジューダスが死んだ事を人伝いで当時は知る事になったのだ。
そのこともあり、カイルはリオンの影にジューダスを見ているのだろう。
「その、カイル……」
「オレは大丈夫だよ?気にしないで……って言っても気にするか。あっ!もうすぐ授業が始まるや!この話は、もうやめよっか!」
笑顔で言うカイルにリオンは返す言葉が見つからなかった。
リオンにとってカイルの存在は苦痛でしかないのだ。
苦痛というのは少し語弊があるかもしれないが、リオンは一生掛けてでも彼に償いをしなければいけないと思う程の存在なのだ。
双子の内1人が生存し、1人が死んでいる。
それは片方の友からすれば喜びであり、もう片方の友からすれば悲しみでしかない。
戦争とは何時どこで死ぬかも分からない所であり、誰しもが死を覚悟している場所だ。
それでもやはり友の死を受け入れる者とそうでない者がいる。
その後者がカイルである。
それが分かっているからこそ、リオンは彼に対して罪悪感を抱いているのだ。
そんなカイルがリオンに何も言わずに、聞かずに、笑っているのだから尚更だろう。
(すまない……カイル)
リオンは胸の中で彼に謝った。
その時の顔は、今にでも泣き出しそうであった。
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