長編3
□奇跡
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それはほんの数日前の出来事だった。
カイル達がフォルトゥナを倒して時代が修正された。その時、消されるはずの記憶が消えていなかった。
カイルはロニと相談し、初めてリアラと会ったラグナ遺跡へと向かった。
ラグナ遺跡に到着すると、レンズは未だに存在し、しばらくすると少女と少年が現れた。
「………え?う、嘘!!ジューダス?!」
「何でだ?!どうしてお前が?!」
当然このレンズから現れるはずのない人物が現れ、2人は混乱した。
「ふふ、やっぱり2人とも驚いているわね。リオン・マグナスとして消滅してなかったから、一緒に連れてきちゃった」
可愛らしく笑うリアラだが、未だにカイル達は困惑していた。
「本当に……ジューダスなの?」
「それ以外に何に見える?」
仮面は付けていないものの、相変わらずの捻くれた物言いにカイルは嬉しくなり、彼に抱きついた。
そして、四人は再会を喜び合った。
「あっ、そういえば!どうして、俺たちの記憶が残ってるの?」
しばらくしてカイルが重要な事を思い出し、リアラに訪ねた。
「自信はないんだけど……おそらく、アルカナルインのレンズが原因かな?」
「アルカナルインのレンズ?」
「あの時、壊れたレンズをハロルドがこっそり持ち出してきちゃったみたいで。破片だけでも強力な作用を持っていたらしく、悪影響は無いからって、私のこのペンダントに組み込んじゃったのよ」
「おいおい、あの天才様は最後の最後まで仕出かしてくれるな」
あの天災で天才科学者を思い浮かべると、皆苦笑するしかなかった。
「だから、このアルカナルインのレンズの作用があったから、記憶もジューダスも消えることが無かったのかもしれない。ハロルドが、アルカナルインのレンズは人の思念に作用しているらしいから、絆は消えないっていう皆の想いにも同じ様に作用するんじゃないかって言ったの」
「すげぇな……。それで成功してるあたり、流石というべきか……」
ロニは今にも彼女が化けて出てきそうで、身震いした。
「でも、流石に未来のナナリーや過去のハロルドには影響は出ないみたいなの。この時代に存在する人にしか作用しないみたい」
「そっか。………あ!それなら、俺、良い事思いついた!ちょっとリアラ、耳貸して!」
カイルがリアラに何かをこそこそと告げる。
それを聞き終えたリアラもカイルの思いついた案に笑顔で頷いた。
「それには少し時間がかかると思うから、後日此処に来ましょう?」
「分かった!」
「何が分かったんだよ、カイル?」
「う〜ん?ナイショ!………さぁ、母さんたちも待ってるから、早く孤児院に帰ろう!」
それにロニとリアラは頷いたが、ジューダスはあまり良くない顔をしていた。
その事にカイルは気付いて、無理矢理ジューダスを孤児院に連れ帰った。
帰れば帰ればで、ジューダスの姿を見たスタンとルーティが嬉し涙を浮かべながら彼に抱きついた。
でも、当然というべきか、あの時と見た目が変わっていないジューダスに疑問を抱く。
それに対して、カイルはリアラのことも含めてこれまでのことを長々と話始めた。もちろん、アルカナルインでの出来事もだ。
壮絶な旅の話を終えたカイルに、スタンとルーティはやはり初めは驚いていた。だが、自分たちも似たような経験をしているため、すぐに全てを受け入れた。
何よりも、あの時救えなかった少年がこうして自分たちの目の前に戻ってきてくれたことが嬉しかったのだ。
そうしてこの日は、それだけで一夜が過ぎていった。
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