長編3

□解放
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ジューダスに向かって振り下ろされた大剣は、彼にではなく、そのすぐ横の地面に突き刺さっていた。


それは寸前で軌道を変えたのか、あるいはジューダスが寸でのところで躱したのか、今のロニに確認することは出来なかった。


理由はどうあれ、ジューダスに当たらなかったことに安堵のため息を一つ溢していた。


「ジューダス!!」


「…………っ」


ゆっくりと上半身だけを起こしたジューダスに、ロニはさらに安堵した。


それは最悪の事態を免れたことと、彼の意識がこちらに戻ってきていたことに起因する。


張り詰めていた気が和らぐと、アルカナルインでの異変に気がついた。


アルカナルインを構成していると言っても過言ではない禍々しい気が、今は消失している。それがこの階のみなのか、それともこのダンジョン全てなのかは確認することはできない。


だが、これがリアラの仕業だということだけは認識出来た。


「間に合ったのか」


リアラの力によって一時的にアルカナルインの支配を封じたら、後はジューダス自身の問題だった。


これ以上自分に出来る事はないと察したロニは、あとは見届けるだけだと思い、静かにジューダスを見守った。










突如アルカナルインの支配から解放されたジューダスは、恐る恐る目の前の人物をみる。


外見を見る限りは、何の影響もない。


だが、アルカナルインの支配を失った守護者がこのまま存在し続けるのか、はたまた肉体ごと消失してしまうのかは検討がつかない。


ジューダスはこれまで被っていた仮面を取り外して、恐る恐る口を開いた。



「………フィン、レイ様?」



名を呼ばれた本人がゆっくりとジューダスの方へと視線を向けた。



「フィンレイ、様?僕が分かりますか?ジュー………リオンです!リオン・マグナスです!」


「………………リ、オ……ン」


ジューダスが名を告げると、ゆっくりとだが確かにフィンレイは彼の名を紡いだ。


それを聞いたジューダスは目を見開き、今にも流れてしまうのではないかと思うぐらい、そこには涙が溜まっていた。



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