長編3
□格闘
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此処に入ってずぐに、アルカナルインの力が僕に影響を及ぼし始めた。
一瞬でも気を抜けば、全てを持っていかれそうになる。
初めは何とかなっていたが、階を進むにつれ、力は増していく。
早速、カイル達の言葉など聞こえてこなかった。
聞こえていたのは、サイグローブの声。
───死した人間が肉体を持つ、か。面白い。そのためか、一度死んだ貴殿をアルカナルインは守護者に選ぼうとしている。それに見合うだけの後悔を貴殿は持ち合わせている。あの時には無かったものを───
『やめろ!僕は、お前たちに取り込まれるような事にはならない!』
───無駄だ。此処の力は、貴殿の意思など関係無い。あの男は、容易く明け渡した。お前も明け渡せば、あの男と共にいられる───
『違う!僕はそういうことを願っているんじゃない!僕は、あの人に本当の事を話にきただけだ!!側にいたいとか、愛を求めるとかそういうんじゃないんだ!!』
───もう、時間の問題だ───
それ以降、サイグローブからの声はなくなった。と同時に、アルカナルインの支配が強まった。
皮肉だが、奴の言う通り僕の意思に反して、体ごと持っていかれそうになる。
唯一の救いと言えば、視界にカイルたちの姿が映っていることだ。
もし僕1人だけだったなら、僕はもう戻ってこられない所にいただろう。
それでも、僕はこの支配に抗うのに必死で、周りなど一切見えていなかった。
そんな時、支配とは別の何か強い刺激が直接伝わってきた。
そのおかげで、アルカナルインの支配が弱まり、僕は意識をはっきりさせることが出来た。
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