長編3

□未練
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*   *   *


次に気がついた時は、私は既に見知らぬ場所にいた。


私は自分の置かれた状況が理解出来なかった。



「私は死んだはず?それなのに、何故?」


ここがあの世というには、あまりにも現実味がなく。かといって、現世にしては死の気配が濃すぎる。


そんな時、私の頭の中に突如として声が響いてきた。



───私は、サイグローブ。貴殿は、このアルカナルインに呼ばれた者。此処は、生前に未練を残して死んだ者の魂が彷徨う場所。通常ならば、その魂は魔物へと化けて此処で巣食う。だが、貴殿は選ばれた。アルカナルインの守護者に───



「選ばれたとはどういうことだ?」




───此処は強者を求める。そして、強者の相手に相応しい守護者たちが各階で待ち受けている。その一人に、貴殿が選ばれたのだ───


サイグローブと名乗ったその者は、淡々と語っていく。


───心配することはない。此処では、貴殿の意思はすぐに消えてしまう。もうすぐ貴殿は、生前の未練にとりつかれた亡霊となる。どれほど拒もうと、既に屍化した貴殿に、アルカナルインに逆らうことなど出来ぬ───


そこまで説明し終えると、それっきりサイグローブは姿を現すことはなかった。


突如突き付けられた状況に、私は為す術もなかった。


いや、元から持ち合わせていなかったのだ。



「未練…………救い出せなかった」


再び思い出すあの光景。次第にあの時の想いが、自然に湧き上がってくる。


それを止めることなど出来ない。


死んだ私には、これからどうなろうと関係なかった。



「何も、なにもできなかった………なら、堕ちる処まで堕ちればいい」



このまま亡霊になることに抵抗どころか、何の感情も湧かなかった。



それが、私の罰なのだと。








───そして、私はアルカナルインの守護者になるべく、亡霊へと成りさがった。


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