長編2
□20章
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こうなる事を予想はしていたものの、実際こうなってしまうと、思うように体や頭が動かなかった。
「リオン!やめるんだ!!」
「そうだよ、リオン!俺、君に謝りたいんだよ!!今までの事を!!」
「あんた、自分で何やってるのか分かってんのかよ!!俺たちをその手で刺したりしたら、あんたが壊れちまうんだよ!!」
「リオン君、自我を失ってわいけない!思いだすんだ!!」
フィンレイ、アシュレイ、ジョブス、ウッドロウが、リオンが行動に移す前に彼の意識を呼び戻そうと言葉を投げかけた。
だが、それはリオンに届いていないのか、彼の歩みは止まらない。
そして、彼らとの距離はあっという間に縮まり、一番近くにいたフィンレイに対して、リオンはナイフを振り上げた。
「兄者!!」
「っ、………大丈夫、かすっただけだ」
思った以上にリオンの動きが速く、フィンレイはギリギリの所でそれをかわしていた。
だが、完全には避けきれてはおらず、袖の部分が薄らと血が滲み始めていた。
「とにかく、あの馬鹿からナイフを奪い取らないとこっちも何も出来ないわよ!」
ハロルドが指摘するも、皆が思うように動けなかった。
「もしかして、リオン君のこの動き………《あの時代》のままなのか?!」
「くくく、今更気がついたか?この輪廻の始まりとも言えるリオンは、全てがあの時のままだ。愛する者を奪われ、愛する者のために仲間を裏切り、濁流に呑まれた哀れなリオンの魂なのだよ!《あの時代》に取り残されたままの魂と記憶だけを持つ魂とでは、力の差は歴然だ。さあ、どうする?」
「そんな事がありえるのかっ………くっ!」
「ウッドロウ!!無茶をするな。お前は動ける体ではない。私の後ろにいるんだ」
イクティノスがウッドロウを庇う。
「イクティノス………」
標的をウッドロウに向けていたリオンだが、イクティノスが割って入ってきたため、今度はフィンレイやアシュレイ、ジョブスへと標的を変えた。
「くそっ!避けるだけで精一杯かよ!!」
素早く繰り出されるナイフを避けるも、やはり完全に避けきれていないため、次々にあちこちに切り傷が出来ていく。
「リオン!!………ミクトラン、お前は一体何がしたいんだ!!どうして、リオンに俺達を狙わせる!」
少し離れた所にいるスタンは、湧き上がる衝動を抑え込み、ミクトランと対峙する。
「………その目だ。その目が、気に食わぬ。仲間のために闘士を剥き出しにする貴様のその目が、腹立たしい。私は、目的は貴様だ。その憎たらしい目を歪ませ、絶望に打ちひしがれる貴様の無様な姿を見たいのだ」
「な、……だと?」
「貴様を絶望させ、目の前で全てを奪い、殺し、そしてこの輪廻を歪んだ方向へと終結させる。そのためには、リオンが必要であり、リオンにお前を殺させる必要がある。輪廻は歪んで閉じられ、リオンは私の元に戻り、全てが塗り替えられる」
「どういうことだ?!一体、何をするつもりなんだ!!」
「輪廻の発端でもある貴様が何も知らないとはな。この輪廻で最期だ。全てを失う前に教えてやろう」
ミクトランが立ち上がると、リオンの動きが止まった。
それに合わせ、スタンと男の会話を避けながらでも聞いていたフィンレイ達は、リオンと距離をとると、ミクトランに視線を向けた。
「あるべき形でこの輪廻が閉じられれば、貴様らが思う様な未来が待っている。だが、その輪廻を歪んだ形───リオンがスタンを殺せば、輪廻は歪み、あるべき形の未来とは逆の未来が形成される」
「何がいいたい!」
「あるべき未来が幸せな未来だとしたら、歪んだ未来とは、憎悪や怨念など人が人を罵り合い、破壊や戦など争いが絶えない未来ということだ」
「ふざけるな!!そんな未来があってたまるか!!」
男はスタンの言葉に耳を傾けることなく、話をそのまま続けた。
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