長編2

□20章
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真っ先にこの薄暗い部屋に飛び込んできたのは、スタンだった。


その後に、フィンレイたちが続いて入ってきた。


「リオンっ!!」


スタンがもう一度、彼を呼ぶ。



彼の前には、ミクトランとリオンの姿がある。


1人は嗤い、1人は無表情。


そんな2人にスタンらは違和感を覚える。



「リオン、俺、約束を果たしにきたよっ!」



これでやっと2人の約束が果たされると思うと、スタンは涙を浮かべずにはいられなかった。



「………やく、そく?僕は、そんなものは知らない」



「何を言ってるんだよ、リオン?約束したじゃないか、また、お前に逢いに行くって!!どこにいても、見つけ出すって!!俺達が初めて出逢ったあの時代に、約束しただろ!!」



少しずつリオンに近づきながら、スタンが彼に語りかける。


手が届く範囲に近づいたスタンは、彼に手を差し出した。



「リオンのいるべき場所は、そこじゃない。その男といれば、お前はずっと苦しみ、悲しみ、涙を流し続けないといけないんだ。リオン、俺との思い出を思い出してよ」



「……………僕は」



リオンが少しずつ腕を持ち上げる。


その手は、スタンが差し出した手へと向かっていた。


「リオン!俺………」


リオンがスタンの手を握る前に、スタンは嬉しそうにはにかんだ。


だが、その手が握られる事はなかった。



パンっ、と乾いた音が部屋に響いた。


それは、リオンが彼の手を弾いた音だった。



「貴様との思い出?何を言っているんだ?それに、僕は馴れ馴れしく慣れ合うつもりはない」



「…………リ、オン?」



まだ状況が飲みこめていないスタンは、ただ茫然とリオンを見ていた。



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