長編2
□19章
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朝日が昇り始める時間帯が近づいてくる中、スタン達はようやく立ち入り禁止区域までやって来ていた。
無駄に広くて大きい学園は、校舎内をうろつくだけでも時間がかかる。
この立ち入り禁止区域は、保健室とは正反対の方向にあり一番奥歯った所に位置している。
「ここまで来たのはいいけど、この学園広すぎだろ?」
ジョブスが目の前に広がる光景に、脱力した。
立ち入り禁止の文字があるその先には、まだ廊下が奥まで続いている。
そして、廊下はさらに分岐し、その先々には部屋が幾つもあった。
さらに彼らを困惑させる要素として、どの部屋にも部屋名のプレートがなく、どれも同じ様な作りをしていることだった。
「これを一つずつ、しらみつぶしにしていくか?」
「それはあまりにも効率が悪すぎる。あの男のことだ、全ての部屋に何かしらの細工をしかけているだろう」
「フィンレイの言う通りよ。単純に考えて、あいつがいるのはもっと奥でしょうね」
ハロルドとフィンレイの言葉に、頭を悩まし始めたスタン達。
この無駄に広い立ち入り禁止区域を無暗に探っても時間の無駄である。
そんなことをしていれば、リオンを助けるのに手遅れになってしまう可能性もある。
どうすれば確実にリオンの元に辿りつけるか、皆がそれぞれ思考を巡らせる。
「スタンさん」
「何?」
「スタンさんが、ミクトランと会った場所というのはどこだったんですか?」
「あ〜えっと………ごめん、分からない。あの時、ぼーっとしながら歩いてたから」
「あんた、役に立たないわね!」
ハロルドの厳しい一言に、スタンはさらに頭を下げたのだった。
「やはり、二手に分かれるべきか?」
「でも、連絡しあう手段が今は無いわ。それより、あいつの性格と行動パターンを読んだ方が早いと思うわ」
「ミクトランの、性格か………」
スタンが唸る。
スタンがミクトランと対峙したのは、《あの時》だけだった。
それにミクトランと関わったのは、本当に終盤のみだった。
ミクトランを知っているかと言われれば、ほとんど知らない様なものだった。
おそらく、リオンの方が詳しいだろう。
「ダメだ。俺、実際のところミクトランと会ったのって、戦いの終盤だけだったからどんな奴か分からないや。………ごめん、皆」
「あんたが知らないなら、皆も知らないだろうし〜」
「ハロルドは覚えていないのか?」
「私は研究者であって、戦闘員では無かったのよね。それに、ミクトランと言えば傲慢だったけど、知識だけは確かなのよね。私もソーディアンを開発できなかったら、技術はあいつの方が上だったもの」
ハロルドも当時を思い出すも、あの時の戦友たちほど詳しくなかった。
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