長編2

□18章
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ハロルドの実験が始まって、数時間が経ちはじめていた。


実験台となってしまった3人の内2人は、未だに眠ったままだった。


一方、アシュレイは少しずつだが顔を上げた。



「アシュレイ!大丈夫か?」


「兄、者?」



少し虚ろな瞳のアシュレイだが、フィンレイの声は認識していた。



「じゃあ、始めるわよ。フィンレイ、弟にこれまでの真実を教えてあげてちょうだい」



ハロルドの言葉に頷き、フィンレイが語りかけようとした時、アシュレイから制止の声がかかった。



「その必要は、ないよ………全部じゃないけど、《あの時》の事思いだしたよ。ちゃんとした記憶をね」



「それは興味深い話ね」


「ハロルド、どういうことか説明してくれないか?それに、今から何をしようとしてたのかも」



実験の内容知らされていない事に、フィンレイが説明するこを促し、その事にスタン達も同じ気持ちだった。



「仕方ないわね〜あんたの話は、後ね。この実験の理由は、記憶を操作出来るかを試したかったの」



「記憶の操作?」



訝しげにジョブスが眉を寄せた。



「そう。私とシャルティエがこれまで調べてきたのは、輪廻の記憶について。記憶が甦る度に、私たちはその時代を詳細に記していったの。それが長い年月を得て、一本の線になったのよ」




*   *   *



これまで、ハロルドとシャルティエは互いに知りえた情報を交換し合い、記載ミスが無いよう注意を払いながら、資料製作に取り掛かっていた。


それは当時、ハロルドの興味から始まったものだ。


前世の記憶だけでなく、人間関係までもが巡っている事に気付いたハロルドは、輪廻に関する研究を始めた。



最初は身近な人物と自分とを含めた少人数を調べていたが、大した情報は得られる事はなかった。


そのため、途中で諦めようとも考えていた時期があった。


そんな時、人々の会話の中で、良く知った名前が聞こえてきて、その人に会う事を決めた。



それはハロルドにとって最後の賭けでもあった。



その人物が、転生していなければこの研究が先に進む事は出来ないと思っていたからだ。



結果、ハロルドの予想は的中していた。




その人は、ハロルドと同様に前世の記憶をもっていたのだ。



それが、シャルティエだった。



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