長編2
□17章
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アシュレイは頭に流れ込んできた情報を処理しきれず、パニック状態に陥った。
「俺………俺は………」
視線だけをリオンにやると、リオンの下から徐々に広がっていく血溜まり。
「リオンっ!」
フィンレイがリオンを抱き起して、止血を試み始めた。
「アシュレイ、お前も手伝え!!」
フィンレイに呼ばれて初めて、現状が飲みこめだした。
「俺は、リオンになんて事を…………っ!!」
「話しは後だ!!それよりっ………!!」
「兄者、どうし…………っ!!」
2人の視線の先には、男が立っていた。
「役に立たぬ弟だな。まさか、兄ではなくリオンを刺すとはな」
「………ミクトラン」
現れた人物に、アシュレイの声が少し震えていた。
「ミクトランっ」
一方、フィンレイは男を前に低く唸った。
「これは愚かな将軍殿ではないか。貴様は、どの時代でも私の邪魔ばかりをするな。でも、そんな事はどうでもいい。リオンを返してもらおうか」
「そうはさせん!貴様にこれ以上リオンを苦しめさせはせん!」
「だから、愚かだと言うのだ。リオンがお前を選ぶとでも言うのか?」
「少なくとも、リオンが貴様を選ぶよりかはな」
そのフィンレイの言葉に、ミクトランが可笑しそうに嗤う。
「何が可笑しい」
「リオンが私を選ばないか…………。なら、試してみるか?」
「馬鹿な事を言うな!リオンは今動けるどころか、意識さえ………っ?!」
フィンレイが最後まで言い切る前に、リオンの身体がピクリと反応し、薄ら瞼を持ち上げた。
「リオン!!」
「…………フィ………レ、…さまっ」
「喋るな、リオン。アシュレイ、リオンを連れてここから離れろ!」
「あ、兄者は?」
「私は、あいつを食い止める」
「貴様ごときが、時間稼ぎとは笑わせる。………リオン、お前の主人は誰だ?」
先程の少し高めの声と変わって、低い声でリオンに問いかける。
その声音には、絶対的支配力があった。
その声にピクリと反応したリオンが、アシュレイの腕から離れ始めた。
「リオン!ごめん、俺、お前に謝らないといけない!だから、そっちに行くな!!」
アシュレイがリオンの腕をとって、必死に言葉を紡ぐが、リオンには届いていなかった。
それどころか、おぼつかない足取りを一端止め、アシュレイの方を見た。
その目には、拒絶が含まれていた。
「ごめ、ん………さい……アシュ、レ……さ、まっ」
今までの仕打ちと少しでも男に加担したという意識もあり、リオンのその言葉だけでアシュレイは動けなくなってしまった。
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