長編2
□16章
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ハロルドに言われ、リオンの寮部屋のシャルティエの私室に入ると、目当ての物はすぐに見つかった。
机の上に、散らばった資料があった。
それを一枚手に取り読めば、ハロルドが欲していた物だという事が分かった。
その手に取った一枚を何気なく目を通した。
そこに書かれていた事は、フィンレイの知らない過去。
《あの時代》で、リオンが何をしたのか事細かく掲載されていた。
また、別の一枚を手に取ると、これまでのリオンが受けた仕打ちや生き様などが書かれていた。
それ以外の資料にもざっと目を通すと、シャルティエやスタンの事も書かれたものから、転生者たちの事が事細かく書かれていた。
その中に一番真新しい資料を手に取った。
それだけは手で筆跡されおり、シャルティエが書いただろうと思われる。
「これは…………、これが本当なら、彼らはっ!」
フィンレイは散らばった資料を急いでまとめると、部屋から飛び出した。
知らなかった事実を知り、フィンレイは焦っていた。
「くそっ!…………これじゃあ、時間が無さ過ぎる!!」
「時間がないって、どうしたの兄者?何で、そんなに焦ってるの?」
フィンレイの前にアシュレイが姿を現した。
その事にフィンレイは酷く驚いた。
「何をそんなに驚く必要があるの?俺、ずっと兄者を探してたんだよね。話したい事があってさ」
「アシュレイ………」
今すぐハロルドの元に行かなければという衝動と弟を救ってやりたいと衝動がせめぎ合い、フィンレイはその場から動けなくなってしまった。
手元の資料をハロルドに渡せば、リオンを助けられる可能性があると言う事は、フィンレイにも理解出来た。
だが、今ここでアシュレイを付き放せば、彼は二度と自分の前には戻ってきてはくれないような気がした。
だから、フィンレイは上手くアシュレイを説得する必要があった。
そのためには、少し時間を要する。
だが、その時間さえも今は惜しい時なのだ。
頭の中でぐるぐると考えが巡っていく中、アシュレイはゆっくりとフィンレイに近づいていった。
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