長編2
□14章
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「………そこをどいてはくれまいか?」
「危険、かもしれないのだぞ?」
「それはどういう意味だ、イクティノス」
その言葉に、イクティノスは可笑しそうに笑った。
それを怪訝な表情でウッドロウは見た。
「この学園はウッドロウみたいな賢い人もいれば、どうしようもない馬鹿もいるだろ?その馬鹿たちが、Sクラスの人間を襲わないとは限らないだろ?俺は只それを言っているんだ。可笑しな事を言っているか?」
「いや、イクティノスの言うとおりだ」
「ウッドロウの身に何かあれば俺が困る。それに、お父上殿も心配すると思うが?次期天皇様?」
(彼はこのような物言いをしたか?何か違和感を感じる。やはり、彼は奴の………?)
そこまで考えると、ウッドロウは彼の横を無言で通り過ぎた。
「…………俺は止めた。何があっても知らないぞ?」
「私の側にいた君なら分かるはずだろ?私は自分の身は自分で守れる」
「そうだったな。すまない。………あまり、遅くなるな」
「そうするよ」
見送るイクティノスの姿を、後ろ手で閉めた戸で遮ったのだった。
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