長編2
□10章
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「…………んっ」
リオンは重たい瞼を持ち上げると、辺りを見渡した。
部屋は暗いが、先程までいた部屋と同じだと認識した。
「っぅ…………は、ははっ」
痛みに顔を歪め、先程の行為が夢ではないことを知らせる。
そして、あまりにも惨めな自分の姿に自嘲した。
「いい格好だな」
「!!」
リオンの背後から、自分を嘲る声が響いた。
その声の主は、ここに居るはずの無い者である。
「可哀相に。…………お前が、《あの時》私にさえ逆らわなかったら、この様な結果にならなかったのにな」
上体を起こしただけのリオンの首元から、すっと白い手が伸びてきた。
それはいとも簡単に引き剥がせれるのに、それが出来ないでいた。
「くくくっ、彼らも可哀相にな。お前のせいで、苦しまされている。いい加減解放してやったらどうだ、リオンよ?」
耳元で囁かれるその言葉に、耳を貸してはいけないと思うも、この声には逆らえなかった。
この男に逆らう事は自分には許されていないのだと、いつも思い知らされる。
逆らえば、それが何を意味するか分からない程、もう馬鹿ではない。
何度も味わってきた事だった。
「…………っ、ヒューゴ様っ」
「懐かしい名だ。だが、その名を持つ者はもういない。いつも言っているだろう?私が誰か、忘れていないだろう?」
男がリオンの耳に舌を捻じ込み、愛撫をほどこす。
「っぁ、………ミクト、ラ……ンッ」
「そうだ。………相当いい様にされたようだな。私のモノに手を出されるのは癪だが、今はあいつらを泳がせておく方が都合がいい」
暗さに慣れた目が、リオンの身体の状態をはっきり捕えていく。
あちこちに殴打の跡と鬱血の痕。
そして、下肢を中心に白濁が付着している。
「今度は、何を企んで…………ぅあっ?!」
ぐちゅっと後孔に無理矢理指を捻じ込まれ、中を抉られ、思わず声を上げた。
「ぐちゃぐちゃだな………相変わらず、はしたない身体だ」
抵抗しようとも、快楽を植えつけられた身体からは力が抜け、すぐに相手のいい様にされてしまう。
せめてもの抵抗として、唇を噛み、声が出そうになるのを堪えていた。
「ふっ、強情な奴だ。それで抵抗しているつもりか?嗤わせる。………一つ、良い事を教えてやろう」
「っ、………いらな、いっ」
「あの金髪の青年、愚かにも私に逆らってきたな。あの目、今も変わらぬ。お前を壊すと言っただけで、あの忌々しい瞳を向けてきた」
ミクトランの感情が高ぶっているのか、リオンの中を掻き回していた指が、内壁にギリギリと爪を立て始める。
「……痛………っ、ああっ…いぁ……」
あまりの痛さに上体が崩れてしまい、四つん這いの様な形となった。
「だがな、私に抗う術を持っていない奴など、恐れるに足らず。あの絶望に満ちた瞳は、愉快だった」
「…………何をっ………あいつに、何を……したっ!」
首だけをミクトランの方に向けた。
「!!」
そこには、口角を異様に上げたミクトランがいた。
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