長編2
□9章
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あれから数日が過ぎ、リオンの体調もすっかり良くなった。
これ以上保健室にいる理由が無くなり、リオンは身支度を整えていた。
「おはようございま〜す。迎えに来たよ、リオン君」
陽気な挨拶をして、保健室に入ってきたのはジョブスだった。
リオンは彼を一瞥すると、ハロルドに訝しげな視線を向けた。
「私じゃないわよ!失礼しちゃうわね!どうせ、フィンレイ辺りでしょ」
頬膨らまして怒る彼女からは、年齢より幼さを感じさせられる。
「…………仕方ない、か」
「諦めなさいな。怪我されて、ずっとここに滞在されても迷惑なのよ!」
こうもはっきりと言われると、逆に気持ちがいいものだと思う。
だからといって、自分と一緒にいて彼らに危害が加わるのも嫌だ。
本音としては、怪我などしても1人でいたかった。
「あんた、変な事考えてたら………実験台にするわよ♪」
「……………ι」
「ほら、さっさと出ていきなさい!実験の邪魔よ邪魔!」
ハロルドに背中を押され、無理矢理保健室から追い出される形となった。
「………もう、あんたを1人にしないから」
保健室を出るなり、そう言われてしまい、リオンは彼に何も言えなかった。
否、今のリオンには彼に言い返す言葉など持ち合わせていないのだ。
記憶で、ジョブスが自分にどう関わってきたのかを知っている。
知っているからこそ、彼の元から離れたいが、それを口に出来るほどの理由がないのだ。
「………好きにすればいい」
それだけを言うと、ジョブスを置いて先を行く。
「へへっ………今度は、あんたを守るよ」
リオンの後をジョブスが楽しそうに着いていく。
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