長編2

□8章
3ページ/7ページ




私室に案内されたスタンは、そこでも周りをキョロキョロと見渡した。


「Sクラスの部屋に入ったのは、初めてかい?」


「あっ、そうです!………ん?そう言えば、ここに簡単に入れましたけど、寮監督や本人の認めがないといけないんですよね?」



「何を言っているんだい?Sクラスが他のクラスと対応が違っていても、さすがにそれは無いよ」



スタンのとんでもない発言に、ウッドロウは苦笑するしかなかった。



そこで初めて、あの生徒に騙されたということに気がついたのだった。



(くっそ〜俺、騙されてたのか!)



「どうかしたのかい?」



「何でもないです」



1人落ち込むスタンに、訳が分からないウッドロウだった。




「それより、本題に入ろうか?」



「あ、はい!」



スタンが適当に腰掛けると、ウッドロウもまた椅子に座った。



「俺、変な夢を見るようになったんです」



「!!」



普段穏やかな表情をしているウッドロウの顔が、強張った。


だが、それにスタンは気付かなかった。




「誰かの名をずっと叫んでて、でもそれが誰だか分からなくて。……それに、起きるといつも涙が勝手に流れてるんです」



最後に、「可笑しいですよね」と付け加えて、苦笑した。


それを笑い飛ばす事もなく、ウッドロウは真剣に聞いていた。




「そんなことはないよ。私もそういうことがあった」


「えっ?!本当ですか?」



「ああ。それはとても辛くて、苦しくて、泣いていたよ、心がね」



(彼を本当に思うものは、皆そうなのだよスタン君)



真実を内に隠しながら語るウッドロウの姿は、どこか悲しそうだった。



「それ、リオンと関係してますか?あっ、リオンって、誰か知ってますよね?」



「ああ、もちろん。………よく、知っているよ」



「その、その夢を見るきっかけになった夢があるんです。その夢にリオンが出てきて………泣きながら、謝ってたんです。その夢だけは、リオンだって分かったんです。だから……っ、この夢もリオンに関係あるんじゃないかって」




眉を潜め、辛そうに話すスタンが《あの時》の彼と重なった。



.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ