長編2
□8章
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私室に案内されたスタンは、そこでも周りをキョロキョロと見渡した。
「Sクラスの部屋に入ったのは、初めてかい?」
「あっ、そうです!………ん?そう言えば、ここに簡単に入れましたけど、寮監督や本人の認めがないといけないんですよね?」
「何を言っているんだい?Sクラスが他のクラスと対応が違っていても、さすがにそれは無いよ」
スタンのとんでもない発言に、ウッドロウは苦笑するしかなかった。
そこで初めて、あの生徒に騙されたということに気がついたのだった。
(くっそ〜俺、騙されてたのか!)
「どうかしたのかい?」
「何でもないです」
1人落ち込むスタンに、訳が分からないウッドロウだった。
「それより、本題に入ろうか?」
「あ、はい!」
スタンが適当に腰掛けると、ウッドロウもまた椅子に座った。
「俺、変な夢を見るようになったんです」
「!!」
普段穏やかな表情をしているウッドロウの顔が、強張った。
だが、それにスタンは気付かなかった。
「誰かの名をずっと叫んでて、でもそれが誰だか分からなくて。……それに、起きるといつも涙が勝手に流れてるんです」
最後に、「可笑しいですよね」と付け加えて、苦笑した。
それを笑い飛ばす事もなく、ウッドロウは真剣に聞いていた。
「そんなことはないよ。私もそういうことがあった」
「えっ?!本当ですか?」
「ああ。それはとても辛くて、苦しくて、泣いていたよ、心がね」
(彼を本当に思うものは、皆そうなのだよスタン君)
真実を内に隠しながら語るウッドロウの姿は、どこか悲しそうだった。
「それ、リオンと関係してますか?あっ、リオンって、誰か知ってますよね?」
「ああ、もちろん。………よく、知っているよ」
「その、その夢を見るきっかけになった夢があるんです。その夢にリオンが出てきて………泣きながら、謝ってたんです。その夢だけは、リオンだって分かったんです。だから……っ、この夢もリオンに関係あるんじゃないかって」
眉を潜め、辛そうに話すスタンが《あの時》の彼と重なった。
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