長編2

□8章
1ページ/7ページ




あれから良く夢を見るようになった。



起きるとすぐに忘れるけど、もう毎日のように同じ夢を見ていたら、さすがに忘れなくなった。



この夢を見始めたきっかけが、《あの夢》からだ。



俺は何かの乗り物に乗ってて、周りにも誰かが居て、ずっと離れた先にも誰かがいることは分かる。



『…………っ!…………!』



それで、ずっと何かを叫んでる。



それが名前なのではないかと思ってる。




必死に叫ぶ俺の視線の先には、確かに人が居て、薄ら笑っているのは分かるんだ。



それなのにその相手が誰なのか分からない。




そして目の前が真っ暗になるといつもその夢は終わる。




それは今日も変わらなかった。




*   *   *



「……………また、だ。また、胸が苦しくて、悲しくて、涙が止まらない」




スタンはいつも以上に早くに目が覚めた。



外は薄らと明るみを帯びていて、まだ起きるには早い時間帯だ。



そんなスタンの目からは、止め処なく涙が流れていた。



声を上げるでもなく、ただ涙だけ自然と流れていく。


いつもこれの止め方が分からない。



「俺、何か忘れてるのかな?リオンの夢を見た時から、この夢をずっと見てる。リオンと何か関係あるのか?」


1人考えるも、あまり考える事が得意ではないスタンは、一分も持たなかった。



「ダメだ!リオンに直接聞くのが早いんだろうけど、今休みだしな〜………仕方ない!あの人にでも聞きに行くか!」


開き直るのも早いスタンである。



そして、いつの間にか止まっていた涙にも驚きながら、いそいそと支度を済ませていった。



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ