長編2
□8章
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あれから良く夢を見るようになった。
起きるとすぐに忘れるけど、もう毎日のように同じ夢を見ていたら、さすがに忘れなくなった。
この夢を見始めたきっかけが、《あの夢》からだ。
俺は何かの乗り物に乗ってて、周りにも誰かが居て、ずっと離れた先にも誰かがいることは分かる。
『…………っ!…………!』
それで、ずっと何かを叫んでる。
それが名前なのではないかと思ってる。
必死に叫ぶ俺の視線の先には、確かに人が居て、薄ら笑っているのは分かるんだ。
それなのにその相手が誰なのか分からない。
そして目の前が真っ暗になるといつもその夢は終わる。
それは今日も変わらなかった。
* * *
「……………また、だ。また、胸が苦しくて、悲しくて、涙が止まらない」
スタンはいつも以上に早くに目が覚めた。
外は薄らと明るみを帯びていて、まだ起きるには早い時間帯だ。
そんなスタンの目からは、止め処なく涙が流れていた。
声を上げるでもなく、ただ涙だけ自然と流れていく。
いつもこれの止め方が分からない。
「俺、何か忘れてるのかな?リオンの夢を見た時から、この夢をずっと見てる。リオンと何か関係あるのか?」
1人考えるも、あまり考える事が得意ではないスタンは、一分も持たなかった。
「ダメだ!リオンに直接聞くのが早いんだろうけど、今休みだしな〜………仕方ない!あの人にでも聞きに行くか!」
開き直るのも早いスタンである。
そして、いつの間にか止まっていた涙にも驚きながら、いそいそと支度を済ませていった。
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