長編2
□7章
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スタンは走ってある教室を目指した。
自分とは無縁のクラスである。
やっとたどり着いた教室プレートには、『1-S』と書かれていた。
「やっぱりもう、誰もいないよな?………失礼しま〜す」
恐る恐る教室を開けると、中には1人だけ生徒が残っていた。
(おっ!ラッキー)
「すみません!ちょっと聞きたいんですけど、リオンの教室ってここであってます?」
「え?リオンならここだけど、今は………って、お前っ?!」
応えながら振り返った生徒が自分の顔を見て驚いてしまったので、スタンは何がなんだか分からなかった。
「え?何?俺、なんかした?」
「あ、いえ、すみません」
(よりによって、この人がリオンを訪ねてくるなんて………運命っていうのは、相当皮肉なものだな)
「で、何か用ですか?スタン先輩」
「へ?何で、俺の名前知ってんの?」
「ま、リオンには劣りますけど、あなたもそれなりに有名人ですから」
ニコッと笑う生徒に、スタンは苦笑した。
(俺も演技が上手くなったもんだな〜でも、この人は俺を知らないからあえて名乗る必要もない、か)
「あそうそう、リオンのお見舞いしたいんだけどさ、寮の部屋番号教えてくれない?」
「あ〜教えたいのはやまやまなんですけど、Sクラスってセキュリティーが良いから。Sクラスの人以外は、その棟に中々入れないんですよ〜」
笑って誤魔化す。
「え、マジでっ?!じゃあ、入るにはどうしたらいいの?」
「寮監督の許可書と本人の認めがないと入れません」
「そっか」
がくんと項垂れるスタンを見て、呆気にとられる生徒。
(嘘に決まってんだろ。てか、S棟の入り方も知らない奴なんて、あんたぐらいだろ)
「まぁ、その内リオンが回復したら、スタン先輩が会いたがってたって、伝えておきますよ?」
「本当に?!ありがとう!君、名前は?」
「俺?俺は、ジョブスって言います」
「そうか、ジョブスか〜また、来るから!!」
スタンは手を振りながら、教室を出ていった。
「俺とあの人がよく似てるとあんたは昔言ったが、どこが似てるかわかんねーわ」
はぁ〜とため息をついて、帰るために席を立つと、今度は銀髪の生徒が入ってきた。
(こいつは確か……)
入ってきた生徒は、ジョブスを見るなり、敵意を剥き出しに睨みつけた。
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