長編2

□5章
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シャルティエが話終えた後、暫く沈黙が続いた。


自分の言葉をどう受け取ったか気にはなるが、リオンが何も話してくれない今は、何を聞いても答えてはくれないだろう。


だから、この沈黙を守り続けている。



すると、リオンが身動ぎし、シャルティエの腕の中から抜けだした。



そして、彼に向けられた瞳は諦めの色が滲んでいた。



「ダメ、なんだ。確かに、シャルティエの言うとおりだと思う。だけど………僕には、それに応える資格などもう持ち合わせてはいないんだ」


「そんなことっ!諦めてはダメです!」



それでもリオンは、首を横に振った。



「この学校という閉鎖的空間の中では、望むことだって可能だ。だがな、それ以上に、僕があいつと関わることなんて難しいんだ。そう、ここでは何が起こるか分からない」



「確かにそうかもしれませんが、だからと言って何もしないよりかわっ!!」



「もう、遅い。僕が覚醒した時点で、転生者には僕が覚醒したということが知れ渡っている」



その言葉に、シャルティエは言葉を失った。


今までリオンが覚醒しても、そんな知らせがあるような輪廻はこれまでには無かった。


だからか、リオンが言っている意味が分からなくなっていった。



「僕は彼らに抗う力など無い。恐らく、明日から僕は彼らに拘束される。それが四六時中か、あるいは短時間かは分からない。そんな状況下に置かれる僕を、助けようなど思うな」


それは懇願などではなく、命令だった。




「僕はもう大事な人たちが、僕のせいで罵倒され、傷つけられるのは嫌なんだ。だから、もう僕に構うなシャルっ!!」


「そんなの嫌です!!黙って貴方が苦しむ姿を見てろと言うんですかっ?!………そんなの、あんまりじゃないですかっ!!彼らだって、彼だってそんなこと望まない!分かってるはずでしょう、坊ちゃん?」




今にも泣きだしてしまいそうなシャルティエとは正反対に、リオンの思いは強かった。



「あいつは覚醒していない。なら、こんな事に巻き込みたくはない。…………そろそろ時間だ、シャル」


彼につられて窓の外を見ると、辺りが明るくたらされ始めていた。



もうすぐ、朝が訪れる。



完全に日が昇ってしまえば、リオンに待ち受けているのは罪の鎖に縛られた輪廻の再来。



それは苦しみしか伴わない。


だれも、幸せなんかになれない。



それはリオンだけに限ったことではない。




シャルティエも彼らも転生者たちも、悲しみ、恨み、憎しみの鎖に縛られ誰も逃れることや出来やしない。





「シャル、これで《終わる》。今まで、ありがとう。あの海底洞窟から今まで付き合わせてしまって、すまなかった」



今生の別れのような事を言うリオンに、シャルティエは焦りと一抹の違和感を感じたのだった。



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