長編2
□1章
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眩い光に目を覚ました黒髪の少年。
「…………朝、か」
見た目に反して、少し低めの声。
少年は体を起こしただけで、布団から出ようとはしない。
そして、手を顔に持っていき、目元から頬のラインをなぞる。
そこには薄らと涙の跡が一筋あった。
「……また、同じ夢。あれは、一体?」
物思いに耽っていると、控え目なノックの音がした。
彼の返事を待たずして、部屋に入ってきたのは黒の燕尾服に身を包んだ銀髪の青年だった。
「おはようございます、リオン坊ちゃん」
黒髪の少年・リオンは、ちらっと青年の方を見ただけでまた視線を外に戻した。
そんな彼の態度を咎めることもなく、青年は彼の横に腰掛けて抱き寄せた。
「また、あの夢を見ましたか?」
「………何故、そう思う?」
「涙の跡」
「この夢は一体僕に何を見せたいのだろうか?………深い海の中にただ沈んでいくだけなのに、起きたら心が苦しいんだ」
青年は何か言葉を紡ごうと言葉を探すも、良い言葉が浮かばなかった。
「………流石に、慣れた。シャル!」
「何ですか?」
シャルとは青年の愛称で、名はシャルティエという。
シャルティエは、彼の方を向き直ると首を傾げた。
「着替える」
「ああ、すみません。新学期早々遅刻はできませんからね!朝ご飯は出来ていますので、お早めに」
シャルティエはそう告げると一礼して、部屋から出ていった。
それを確認すると、リオンはもう一度外を見て一つため息を吐いた。
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