長編

□願うならば……10
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リオン達が敵の船に乗り込んでからは、街への攻撃が止んだ。

街に残っていたモンスターを倒し、後の処理をオベロン社に任せ、ジューダスはイレーヌの元へ言った。


「ありがとう、手伝ってくれて」

「ああ。それより、これからどうしていくんだ?」

「ジューダスさん?でしたわね。私はこの街にある貧富の差を失くして、皆が笑って過ごせる街にしたいの。だけど、それにはまだまだ時間がかかるわ」


バルックもイレーヌも街のために必死だった。

それを知っているジューダスは、なんとかして生き残らせたいと思う。

だが、この時代に飛ばされる前にリアラが言っていた言葉が引っ掛かっていた。


《生かすことが出来ない人もいる》


それが誰を指すのか。

ジューダスはどことなく理解していた。


歴史が改変しなためには、バルックやイレーヌの世界の裏切りは絶対なのだ。

そうしなければ何もかもが上手くいかなくなる。

このグレバムの件でさえ、ジューダスが一言リオン達に言えば、先回りだって可能である。


世界とリオンを取るならば、必然的に彼女らは助からない。

それを理解しているのに、何故ジューダスは接触しようとするのか。


「お前が作ろうとしている街は、18年経っても良い街になっている」

「どうしてそういえるの?」

「………そんな気がするからだ」

「そう、ありがとう。私、リオン君とは長い付き合いなの。だけど、あんなリオン君の表情を見たのは初めてだわ」


どちらとも言葉を発せず、一時の沈黙が訪れた。

だがそれは不快ではなく、良い間であった。


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