長編
□願うならば……5
1ページ/4ページ
あの惨劇が再び起きた。
繰り返してはいけないあの惨劇を止めることが出来なかった。
何も宿していないリオンの瞳が、ジューダスを視界に捕えた途端、目が見開かれ、絶望に揺れていた。
「………リ………オンっ」
フィンレイが僅かに残っている力を振り絞って、リオンに微笑みかける。
それを見たリオンは、膝から崩れ目には涙を浮かべていた。
「あっ……ご、……ごめん……な……さいっ」
ジューダスは戸を閉め鍵をかけると、2人に駆け寄る。
「リオ、ン………あの………男と…い、て……は」
「フィンレイ様、喋ってはいけません!」
放心状態のリオンを傍らに、ジューダスは急いで処置を行う。
「………あ、ぁ………っフィン、レイ……様……ごめ、ごめん……なさいっ」
フィンレイは何かを伝えようとするも、思った以上に毒の回りが早いようだ。
ジューダスも処置を急ぐ。
「………り、……お…ん……っ」
その一言でフィンレイは目を閉じた。
「あぁっ………フィンレイ、様?フィンレイ様?!………ごめ……嫌、だ………ぅっ」
リオンの瞳からは涙が流れ落ち、ずっとフィンレイを見ている。
たが、目を開けることはなかった。
.