長編
□願うならば……3
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難を逃れられたジューダスは、リオンの部屋へと案内されていた。
「………何故、僕をここに?」
「え、あっ………シャルの声が、聞こえたから」
リオンの周りには、シャルティエの声が聞こえる者がいない。
それ故か、リオンは部屋から人払いをし、鍵まで掛け、ジューダスを見る目は輝いていた。
「本当に、聞こえているんだな?」
「まあな。僕にも、資質はどうやらあるらしいな……」
リオンを何とか誤魔化そうとするが、もう一人の視線が疑っていた。
「……………ι」
「シャル、何をそんな怖い顔をしているんだ?」
『だって、この人、僕のことシャルって言ったんですよ〜 しかも、何か呼び慣れてたし〜 怪しいですよ!!』
シャルティエの言葉に何て言い訳をしようかと考えていると、ふいに服の裾を引っ張られた。
「何だ?」
「お前、シャルの前の持ち主じゃないのか?」
ああ、と頷くとさらにリオンが畳み掛けてきた。
「じゃあ、何でシャルのこと知ってたんだ?」
「ここに来る途中に声が聞こえたからな。それで、リオンがシャルって呼んでたからな」
ふ〜ん、と素っ気ない返事をしたリオンは、そのことに興味をもう無くしたのか、違う話を始めた。
「お前、名前は?」
「………ジューダスだ」
「ジューダス……、剣、出来るのか?」
「ああ、それなりにな」
ジューダスが応えると、リオンの目が輝いた。
それを見たジューダスは、昔の自分はこうだったのかと思う反面、目の前の子供が可愛く思えた。
(……僕は、もうリオンで無くなったのだ。これもカイルたちのおかげなんだろうな)
それが嬉しくて、自然と笑みがこぼれる。
そんなジューダスを見たリオンが顔を朱に染めたことなど、ジューダスは知る由も無かったが。
「どうかしたか?」
「っ、何でもないっ!!少し、待ってろ!!」
リオンは顔を見られたくなかったのか、シャルティエを残して部屋を飛び出していった。
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