長編

□記憶
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あれからしばらく日が経ち、リオンが目を覚ましたのはちょうどフィンレイがいない満月が明るく照らしだす夜中だった。


『気がつかれましたか、坊ちゃん』


リオンが目覚めたことに気がついたシャルティエは、停止していた機能を呼び覚ます。


「………シャル、僕はずっとどうしていたんだ」



口調が以前のように戻り、いつの間にか瞳に光が宿っていた。


『坊ちゃん……?』


「シャル、何があったか知らないか?」


『坊ちゃん!?………もしかして、記憶が?!』


リオンは苦笑すると、シャルティエを顔の位置に持ってくる。


「分からない。ただ、目覚める前の記憶が分からないんだ。何があったのか。何故僕はここにいるのか………覚えているのは、闇から逃げていたことぐらいだ。後は分からない」


リオンが俯いたため表情が読み取れない。


『僕からは何も言えません。僕は………坊ちゃんに何もしてあげられなかった。ごめんなさい』


「どうしてシャルが誤る?シャルは悪くないだろう。…………でも、目覚めてシャルがいなかったら、僕はどうなっていただろうか。きっと、壊れていたに違いないだろうな」


リオンは苦笑する。



シャルティエはリオンのこんな姿を見ているといたたまれなくなった。



怖い闇から解放されたいがために自ら記憶を捨てたのだ、とシャルティエは悟った。



『(フィンレイ様のことは、覚えているのだろうか?)』


シャルティエは思ったが、口に出すことは出来なかった。



言えば、リオンの精神が崩壊するのではないかと。


いや、崩壊しているからこそ、今度は狂わないだろうかと不安になり、怖くて言えなかった。



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