長編

□拒絶
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* * *


フィンレイは、今回の件の報告書を国王に提出していた。


リオンのこともあり、詳しくは書かなかった。


「リオンの様子は?」


「リオンはまだ昏睡状態です。……回復には、まだ療養が必要です」


「そうか。七将軍はどうするつもりじゃ?」


「アシュレイが…………リオンの世話をします。それ以外の者は、いつも通り任務にあたります」


フィンレイは一礼すると城をあとにした。










フィンレイが城を出た所でミライナが待っていた。


「リオン君の様子を見に行かなくていいの?アシュレイに任せていいの?」


ミライナの言いたいことを何となく理解したフィンレイは、弱く呟いた。


「私にはリオンに会う資格などない。もし、私が会いに行ってもリオンは…………」


「そぅ。でも、全く顔を見せないのは良くないわ。心の整理がついたら、一度会いに行ったらどうかしら」


「………そうだな。そうするとしよう」


フィンレイは何かが吹っ切れたような顔をした。



* * *


その日の夜、リオンは真夜中にも関わらず、森の奥を歩いていた。


アシュレイは戻っていて、リオンの側に誰もいなかった。


月光が夜道を照らし出し、リオンを促す。


目的地など無く、ただ森を彷徨っているリオン。


「………どこにいるの?僕を呼んでいる君は誰?」


『シャルティエです。そこを真っ直ぐ進んで下さい』


リオンに話しかけているのは、ソーディアン・シャルティエ。


心が崩壊しても資質は持ち合わせていることに、シャルティエは嬉しかった。


リオンはシャルティエの声に惹かれるまま、ゆっくりとした足取りで進んでいく。




どれぐらい歩いただろうか?


森の奥に見晴らしの良い湖があった。


水面には月が映し出されている。


しかし、そんな景色にも目もくれず、リオンは湖の奥ばった場所へ向かう。


そこには、忘れさられたかのように放置されているシャルティエの姿があった。


リオンが現れると、シャルティエはコアクリスタルを光らす。


「…………どうして僕を呼ぶの?僕は誰からも必要とされていないただの生きた人形」


『そんなことはありませんっ…………!!少なくとも、僕は貴方が………エミリオ坊ちゃんが必要なんですっ!!』


「エミリオ………?君は僕が、必要?」


何も宿していない瞳が、シャルティエを眺める。


『そうです。僕には、エミリオが必要です。僕は、貴方がずっと小さい時から一緒にいました』


「………っあ。分からない。何も分からない。君が誰で僕とどういう関係なのかも………怖い。思い出すのが、怖い。思い出したら、また捨てられる!!嫌だ、怖い!!」


リオンは肩を抱き寄せ、その場にしゃがみ込んだ。


カタカタと震える身体を必死に押さえ込むように、ぎゅっと握りしめる。




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