長編
□拒絶
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緑があり、鳥のさえずりが聴こえ、静かで穏やかな森の奥にリオンは療養していた。
しかし、ずっと窓の外の景色を眺めながら座っているだけ。
未だに瞳に光が戻っていない状態で、外を眺めている。
「………リオン」
リオンの世話を任されているのは、フィンレイではなくアシュレイだった。
アシュレイはリオンに話かける。
「リオン、気分はどう?」
「………………」
「今から身体拭くから、少し我慢してね」
リオンの服はモリュウ領の伝統的な着流しを着ている。
これは楽な服装の方が世話をし易いだろうと、ミライナが提案したであった。
一つ一つ丁寧に拭いていくアシュレイ。
それでもリオンの瞳は、外に向いたまま。
「リオン、助けるのが遅れてごめんね」
ピクリとリオンの肩が揺れる。
「………………の」
「えっ……?!」
「泣いて…………いるのか」
「!?」
今までどれだけ話しかけても反応しなかったリオンが、アシュレイを視界に入れ言葉を発した。
「何故、謝る?僕は誰からも必要とされてない。ただの生ける人形。貴方もあいつらと同じなのだろう?もう、何も感じ無い。何一つ、覚えていない。なのに……………暗い闇が!!恐怖が!!怖い!!怖い、怖い!!」
リオンは譫言のように呟くと、震える身体をぎゅっと抱きしめた。
「大丈夫、……だから。僕が側にいてあげるから!!だから………怖がらないでっ!!」
アシュレイはリオンを包み込むように抱きしめた。
リオンを落ち着かせるため、髪を梳いてやる。
「ずっといてあげるから……」
リオンの身体から震えが止まっていく。
こんな弱々しいリオンの姿は痛ましく、以前からリオンに好意を寄せていたアシュレイは、絶対にこの手を離さないことを胸の内に秘めた。
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