長編

□願うならば……28
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時を遡ること数年前。



それはジューダスが幼いリオンに会いに来たあの日での出来事だった。


突如現れたジューダスに、リオンと同時に名を呼ばれた時だった。


「「シャルっ!」」


『えっ……?』


不思議な感覚だった。


初めて会うはずなのに、坊ちゃんに愛称として呼ばれている“シャル”と呼ばれても違和感を感じなかった。


むしろ、呼ばれ慣れているような錯覚を起こした。



シャルティエの声が聞こえる理由を何とか言い訳していたジューダス。


そして、初めて聞こえる人物に出会った喜びに浸っているリオン。



2人が会話をしている中、ずっとこの違和感を考えていた。


考えても分からなくなり、諦めていた時だった。



何の前触れもなく、走馬灯のように記憶が流れ込んできた。


『(何、これは、僕の記憶?えっ、ジューダスと坊ちゃん、それに僕が別の時代にいたの?)』


初めは困惑した。


それは今までと同じ記憶と、これから先に起こるであろう未来が見えているからだ。



そして、突如と不思議なことが起こった。



──────シャルティエさん



少女の声が、レンズ内で響く。


それはマリアンのものではなく、ずっと前に聞いた懐かしい声だった。



──────シャルティエさんにお願いがあります。



その声の主は主体を名乗らず、協力を要請してきた。



『(お願い?)』


──────はい。でも、何をするというわけではありません。私は貴方の望みを叶えたいのです。それが、私たちの協力にもなるのです。



『(何のこと?)』



──────詳しくはお話出来ません。ですが、シャルティエさんなら分かってくれると信じています。


そのために、消されている記憶を全てお返しします。


そうすれば、目の前に起こっている現象が理解できるはずです。




『(…………っ、君はリアラ?)』



──────そうです。ジューダスがここにいる理由を教えます。


ジューダスが消える際、リオンを別の個人としての存在を認めました。


そしてジューダスは再び味わった絆を、リオンにも感じて欲しいと、失わないで欲しいと願いました。


私には聖女としての力が少しだけ残っていました。


それを利用して、ジューダスにリオンが生きている未来を歴史を改変せずに行うことが出来ると言い、今、この時代にいます。


『(そんなことしてもいいの?歴史を修正するために、君たちは戦っていたのじゃないの?)』



そのシャルティエの疑問は尤もだった。


だが、リアラは気にせず続けた。


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