長編
□願うならば……23
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フィンレイは少し聞こえるアシュレイの叫びに苦笑した。
「私もまだまだだな。すまない、アシュレイ。私はリオンのために全てを捧げると決めたんだ」
フィンレイはクルーザーを操作する腕を見た。
今まで以上に透けていた。
それが何を意味するのか、フィンレイはすぐに察知した。
「大丈夫だと思ったのだが、運命の悪戯というやつか」
だんだんと岸と洞窟の入口が見えてきた。
フィンレイはクルーザ−を岸に着けると、リオンとジューダスを迎えに行った。
「リオン、ジューダス」
声をかけると、リオンを横抱きにしたジューダスが現れる。
抱えられているリオンは、眠っていた。
「どうかしたのか?」
「やはり、無理をしていたみたいだ。気を失っている」
「………そうか。ジューダス、アシュレイに見つかったよ」
「!?…………それにしては、早かったな」
「ああ。私も心を鬼にしたのでな。アシュレイを突き放してきた」
その言葉にジューダスは驚いた。
誰に対しても優しかったフィンレイが、まさか、血の繋がった弟を拒絶するとは思わなかったからだ。
「あなたはそれでいいのですか!?」
「ジューダス、言葉。私は、リオンに全てを捧げると決めているんだ。………アシュレイにとって、私は邪魔な存在でしかない」
「どういうことですか!?アシュレイ様は、そんな風には!!」
ジューダスが弁解しようとするが、それをフィンレイは首を横で振ることで否定した。
「違うんだ。ジューダス、君も嫌というほど父君と評価されてきただろう?それと同じなんだ。いくらアシュレイが優秀な将軍だとしても、民はどうしても私と評価してしまう。それは、私が亡き今でもあまりかわっていないだろ?」
フィンレイの言葉が、的確に現実を言い当てたことに言い返せなかった。
「だが、私がいなければいつかアシュレイは、私の弟ではなく、アシュレイとして、一人の将軍としてみられる。そう、君やリオンがそうなったようにな」
フィンレイの微笑みには、誰よりも弟を思う兄の姿が感じ取れた。
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