長編
□願うならば……22
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ジューダスたちはイクシフォスラーでダリルシェイドの西側にある洞窟へと向かった。
そこはベルクラントによって、地形が歪んだ際に現れたものであった。
三人は近くまでイクシフォスラーで行くと、そこからどうするべきかを考えた。
「そこにいくには、ボートが必要だな」
「今のダリルシェイドに行けば、確実に動きづらいだろう。海竜がいないあたり、既に違う場所に行ったか、それかまだ来ていないかのどちらかだな」
ジューダスはスタンたちが今どこにいるかも知りたいが、その前に、どうすれば洞窟の中に入れるかを思案していた。
「私がダリルシェイドに行き、簡易なボートを借りて来よう」
「戻っても大丈夫なのですか?あなたは……」
リオンがその先の言葉を濁らした。
「大丈夫だ。私を覚えている人などそうそういないだろう。それに、すぐに私だとは気付かない。感でしかないが、きっと大丈夫だ」
フィンレイが自身をもって言うものだから、ジューダスもリオンも何も言い返せなかった。
「では、言ってくる」
「フィンレイ様!………気をつけて」
フィンレイは一言頷くと、ダリルシェイドへ向かった。
そんな彼の背中を見送った2人は、互いに顔を見合わせた。
気がつけばジューダスと2人っきりというシチュエーションに、リオンは顔を薄ら朱に染めた。
ジューダスはリオンに思いを告げられていたことを思い出し、そんな初々しい反応を見せるリオンを苦笑した。
ジューダスは無言でリオンを引き寄せると、イクシフォスラーの影に身を潜めた。
「リオン………何をそんなに恥ずかしがるんだ?」
「べ、別に、そういうわけでは………///」
「一つ聞きたいことがあるんだ。僕がリオンを助けたことをどう思っている」
この質問にリオンの肩が少し揺れた。
「…………初めは、何故生きているのか?どうして、助けたのか?って思った。目の前の出来事の一部に加担したのだと思うと、僕はどうすればいいか分からなかった」
震える声で話し始めるリオン。
「僕はマリアンを助けたくて、ああするしか無かった。その事には後悔していない。ただ、罪悪感はある。今の世界を見ると尚更だ」
「そうか。これから辛い現実が待ち受けているだろう。だが、リオンの周りには手を差し伸べてくれる仲間がいる。だから、現実を受け止めて、生きて欲しいんだ。全てが終わって、リオン自身のやるべき事が終わったその時は、幸せを………今まで味わったことのない幸せを手に入れてくれればいい」
その言葉が、遺言のように聞こえる。
そのことに、拭えきれない不安がある。
「………その時は、ジューダスは側にいるのか?」
その質問にすぐに答えることはなかった。
しばらく、沈黙が流れた後ジューダスは頷いたのだった。
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