長編
□願うならば……22
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イクシフォスラーで帰還したジューダスは、フィンレイが小屋の外に出ているとは思いもしなかった。
会話は聞こえないが、フィンレイが誰かと話していることは明白だった。
その相手が、誰なのかも言うまでもなかった。
その事にジューダスは安堵した。
(………気がついたのか、良かった)
ジューダスは2人の会話を邪魔せぬように静かに近づいた。
近くまで来ると、流石というべきか気配だけを読み取り、フィンレイがジューダスに問いかけながら振り返った。
その腕の中には、驚愕に目が見開かれたリオンの姿があった。
実際、目でリオンの存在を確認すればするほど、緊張で張り詰めていた糸が緩みそうになる。
『坊ちゃん!!……良かった、気がついたのですね!!』
シャルティエはジューダスの腰にぶら下がりながらも、やはりマスターのことが気が気で無かった。
「………っ、シャル!!」
リオンの方もシャルティエを巻き込んでしまったので、側にいなかったから諦めていた。
だが、確かにシャルティエの声を聞き、申し訳なさよりも嬉しさが込み上げてきた。
そのことに気付いたジューダスは、シャルティエを外し、リオンに返した。
「すまなかったな。少し、借りていた」
『坊ちゃん!!』
マスターの手元に再び戻れたことに喜びを隠せないシャルティエ。
そんなシャルティエの喜びに便乗するかのように、リオンもシャルティエに向かって微笑み返した。
生かしたことで、リオンが再び死を選んでしまったらどうしようかと思っていた。
それも心配だけ終わりそうで、以前より穏やかに笑うリオンに張り詰めていたものが無くなった。
ジューダスは安堵感から、リオンの額に自分の額をコツンと合わせた。
「……………っ///」
死を覚悟してジューダスに思いを告げたリオンからしてみれば、今の現状は恥ずかしくていたたまれまかった。
「…………おかえり、リオン」
ジューダスの言葉に視界がぼやけていくリオン。
自分はいつから泣き虫になったのか、と疑いたくなるほど先程から涙で瞳が覆われていく。
「……ただ、い……ま」
リオンが紡ぎ出した言葉に、ジューダスは微笑み頭をくしゃくしゃっと撫でたのだった。
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