長編
□願うならば……21
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フィンレイに支えてもらいながら何とか起き上がったリオンは、驚愕に目を見開いていた。
「僕は……僕は………生きている価値なんてない!!どうして?どうして、ジューダスは僕なんかを救ったんだ!?」
「それは、リオンを死なせたくなかったからだ。ジューダスは、リオンに幸せになって欲しいと、もう苦しまなくていいと、そう思っている」
今この場にいないジューダスの言葉を代弁する。
「僕は、世界より1人の女性を優先したんだ。裏切り者と呼ばれてもおかしくないんだ。それなのに、僕が幸せになる価値なんて何一つない!!」
「リオンが一時でも敵方にいたと知っているのは、スタンたちと国王だけだ。まだ、住民たちは知らない」
「あなたは全てを知っている!僕はあなたをこの手にかけた!それだけでも許されない罪なのに、僕がしたことは隠ぺいされ、これまで生きてきた。アシュレイ様に真実を告げることなく!!」
リオンは思いがけない方向に転がっている状況に思考が追いつてこなかった。
「リオンが唯一無二の肉親であるヒューゴに逆らえなかったことを知っている!私はそれを救いたかった。だが、救えなかった」
「僕は、ずっとあなたに救われていた。ずっとフィンレイ様が親だったらと思っていました」
「私もずっとリオンが欲しかった。だから、どうにかしてヒューゴの下から切り離そうと何回か試みた。それも失敗に終わったがな」
「違います!!僕がフィンレイ様の側にずっといたから………ヒューゴが」
あの時の惨劇を思いだし、リオンは表情を曇らす。
「そのヒューゴだが、リオンが知っているヒューゴはヒューゴではない」
「何を言って………」
「ジューダスが話してくれた。リオンも文献で知っているはずだ。天地戦争時代の天上王のことを」
「確か、ミクトラン」
「そのミクトランが、ソーディアンを介して生きていたんだ。そして、そのソーディアンを発見したヒューゴは意識を乗っ取られた。それが、リオン、お前が生まれる前の話だ」
フィンレイが告げた真実に、遂にリオンが混乱に陥った。
「嘘、だ。嘘だ、嘘だ嘘だ嘘だ!!信じられるか!今までのヒューゴはヒューゴじゃない?!なら、今まで僕が思ってきたことも全てまやかしだったてことか?!」
「今までヒューゴに命令されたことも、何もかもミクトランの仕業だったんだ」
「僕がして来たことは……、僕があの時選択したことは全て奴の手の上だったてことか?!僕は、ヒューゴだと思い込んで、ずっと掌の上で転がされていたのか!?」
リオンは両手で顔を覆った。
「今すぐに、全てを受け入れろとは言わない。だが、真実から目を背けるなリオン」
フィンレイがリオンの頭を抱き抱えた。
「どうして………フィンレイ様もスタンも………ジューダスも僕に……っ」
言いたい言葉はあったが、声に出すことが出来なかった。
シャルティエと2人の世界だけだと思っていたリオンにとって、今のリオンの中に複数の人間が入り込んでいる世界は知らないものだった。
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