長編

□願うならば……15
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*  *  *


時は少し前に遡る。



リオン達が飛行竜でセインガルドへ戻っていくのを見送ったジューダスは、優しい表情を一変させ、苦虫を噛み潰した様な表情をした。


薄くなっている右手。


「グレバムと会った影響か。それでも、全てが消えていないということは、歴史には影響がない、か」


リオンの記憶を持っているジューダスは、全てを黙認し、これから起こるであろう事態を傍観するしか出来ない。


手出しは出来ない。


唯一ジューダスに許されていることは、リオンを生かすこと。


だが、それも残酷なことだ。


リオンが裏切らなければ、歴史は変わってしまう。


分かってはいるが、あんな思いは己のみで十分だと思う。




「リオンには幸せになって欲しい。だが、裏切りの後に待ちうけているものは…………」



ジューダスは天を見上げる。


雪国であるハイデルべルグの空は曇っている。


その天候が今のジューダスの気持ちを表現しているかのようだ。



「今更迷ってどうする。歴史は変わらない。リオンに対してどのような風が吹いたとしても、それは元々僕が侵してしまったことだ。



………僕は、今更後悔してしまっているのか?リオンは僕でもあるが、もう僕じゃない。僕と同じ運命を辿り、僕のわがままでリオンに生の人生を歩ます。




本当に……本当に、それでいいのか?」




そこまで言うと、ジューダスの体は光に包まれて消えた。


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