長編
□願うならば……15
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時は少し前に遡る。
リオン達が飛行竜でセインガルドへ戻っていくのを見送ったジューダスは、優しい表情を一変させ、苦虫を噛み潰した様な表情をした。
薄くなっている右手。
「グレバムと会った影響か。それでも、全てが消えていないということは、歴史には影響がない、か」
リオンの記憶を持っているジューダスは、全てを黙認し、これから起こるであろう事態を傍観するしか出来ない。
手出しは出来ない。
唯一ジューダスに許されていることは、リオンを生かすこと。
だが、それも残酷なことだ。
リオンが裏切らなければ、歴史は変わってしまう。
分かってはいるが、あんな思いは己のみで十分だと思う。
「リオンには幸せになって欲しい。だが、裏切りの後に待ちうけているものは…………」
ジューダスは天を見上げる。
雪国であるハイデルべルグの空は曇っている。
その天候が今のジューダスの気持ちを表現しているかのようだ。
「今更迷ってどうする。歴史は変わらない。リオンに対してどのような風が吹いたとしても、それは元々僕が侵してしまったことだ。
………僕は、今更後悔してしまっているのか?リオンは僕でもあるが、もう僕じゃない。僕と同じ運命を辿り、僕のわがままでリオンに生の人生を歩ます。
本当に……本当に、それでいいのか?」
そこまで言うと、ジューダスの体は光に包まれて消えた。
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