〜Duet tune of fate〜


□序章『悲劇』
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「うわっ!うあぁぁぁ!?」

「きゃぁぁぁ!?」

轟音と人々の狂気の声が入り交じり、俺の耳を劈く。

周りは焼き払われ、のどかな町は地獄絵のようだった。

俺はただ呆然と立ち尽くしていた。

すると突然、一つの影がが飛来した。

上空に舞い降りたのは、死神を思わせる、全身
に漆黒の布を纏った魔導師だった。

それは目の前に降り立ち、ゆっくりと向かって来る。

「……っ!」

俺は怯えながらも、右手の剣を構える。

だが魔導師は怯む事なく、こちらに歩み寄ってきた。

「来るな…っ」

俺は恐怖に怯える声を懸命に張り上げる。

「斬るぞっ…!」

その言葉にやっと反応し、足を止めた魔道師は、代わりにどす黒い球体を携えた右腕を上げる。

「ひっ…」

コロサレル。

そう思った瞬間、目の前が真っ暗になり、意識を失った。





ガラガラッという音と共に重い瞼を持ち上げる。

目の前には、吸い込まれそうになるほど色鮮やかな空が飛び込んでくる。

「うっ…」

瞬間、鼻がもげるような異臭が、俺の鼻孔を劈く。

直後、ここに気絶している理由が、まるで電撃のように駆け抜ける。

あわてて状況を確認しようと、体にグッと力を入れて立ち上がる。

周りを見た瞬間、俺の中で時の流れがが止まった。

まるで背景がすり替えられた舞台のように、辺りの様相が変わっていた。

木々は倒れ、あるものは黒焦げになり、樹木かさえもわからいくらいだ。

木だけではない。

俺がいた筈の土地も住居も、その原形をとどめていない。

さらに拍車をかけるように、周りには焼け焦げた衣服を纏わりつかせ、ねじくれた形で横たわる肉片が、あちこちに転がっている。

「あ…あぁ…っ」

言葉にならない何かが喉元から込み上げてくる。

俺はその場に崩れかけた。

どうして――こんな・・・。

そのとき、後ろから図太い声音で声をかけられた。

「悔しいか?力のない自分が、守れなかった自分が」

空虚な気持ちでゆっくり振り替えると、そこには意識を失う前に対峙していた黒い布を纏った魔導師の姿があった。

ソイツを見た瞬間、俺は感情の赴くままに走り出していた。

近づき、右拳を佇む魔導師の左頬に叩き込む。

が、魔導師は寸前で回避し、逆に腹部に右拳をぶち込まれた。

「ぐっ!」

魔道師の力は凄まじく、2、3メートル後方に吹っ飛ばされる。

俺は腹部を押さえながら、逆流してくる胃液で激しく咳き込む。

イタイ、クルシイ。

俺は死場で死を覚悟した。

「憎いか?お前の親や友達、故郷を奪った私が」

薄れ掛けている意識のなかで、魔道師の言葉は鮮明に聞こえた。

俺は返事とばかりにソイツに精一杯の憎しみの目を向ける。

魔導師はその視線に籠った感情を理解したのか、ふっと口元を綻ばせる。魔導師は、突然身を屈め、俺を担いだ。

少し歩くと、近くにある川にたどり着いた。

そこで魔道師は俺を下ろし、襟をつかんで引き寄せ、こう呟いた。

「私の名はジル・ローディアン。覚えたか?ジル・ローディアンだ。私が憎ければ、殺しに来い」

それだけ言うと、魔道師は俺を川に落とした。

(憎ければ―――だと…?!)

流されながら、思う―――憎い、憎い、憎い―――絶対に殺してやる!

川の流れに揉まれて定まらない視界の中で、俺は強く思い―――そして意識を失った。
 

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