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こちらは以前blogで書いたコネタと連動しています。宜しければそちらもどうぞ↓

告白シリーズその一(彼女の場合)はこちらから













稀にない睡眠不足。
いつも充分に取れている、とも言えないのだが、短い睡眠時間でも深い眠りにつく事は出来ている…と思う。
だが昨夜は違った。

原因はぶっさいくな黄色い縫いぐるみの‘いびき’だ。
縫いぐるみに‘いびき’なんてのは可笑しな話だが、事実、それ以外に選択肢はない。

怒りが込み上げてくる程の騒音に、たまにしかないゆっくりな夜を邪魔された所為で。

思わず、奴が一番大切に誇っているたてがみ(毎日こっそり手入れしているのを知っている)をむしり取ってやろうかと考えた位だ。
どうせお世辞にも立派とは言えないモンだし?

けれど無邪気な妹によって縫い付けられた華々しい作品の数々が、無惨にほつれまくってる姿(おそらく自分でやったと思われる)が、憐れにも思えて、とりあえずは見逃してやることにした。

結局のとこ、いつも通り‘夜の勤め’に出て、疲れてそのままバタン・キューってヤツが、俺の性には合ってるのかもしれない。

まあお陰で、とんでもねぇサプライズが起こっちまったワケですが…。

































「ねみ…」


顎がつりそうな欠伸を朝から何度発しただろうか。
擦りすぎた目尻がカサカサになっている。
四限目の授業で越智さんからの‘一撃必殺、赤ョーク攻撃’(通常時は白チョーク)を喰らっても、瞼の重さが軽減することはなかった。


「一護、今日お昼どうする?」
「あ〜、今日はいーや。すっげぇ寝不足でさ。どっかでちょっと一眠りして…」
「いっっ!ちごォォォォォォォォォ!!寝不足とはなんと意味深なハ・ツ・ゲ・ン!一体ぬぁ〜にが…はっ!!ももももっ、もしやっ!誰にも言えない秘密の花ぞごっふぅぅぅぅぅっ!!」
「るせー」
「そこにいると邪魔ですよ、浅野さん」
「敬語はぬぉぉぉぉぉぉぉぉ〜っっ」


いつものやり取りを交わしてやって来たのは校舎の裏手にある、こじんまりとした庭、みてぇなとこ。
裏手とは言っても、差し込む西日が加減よく葉の隙間を通り抜け、時折吹く風は心地よく肌を掠めていく。
特に休憩スペースがあるわけでもないが、敷きつめられた芝生に伸びた木々と間隔よく並んだ沢山の花々は、素人目から見ても何気に、と言っちゃあ悪いが、よく整備されていると思う。
おまけに静かで人の姿もあまりなく、たまに事務員のおっさんが花壇の手入れしてるのを見るくらいだ。
まさに昼寝するにはうってつけの、いわゆる穴場ってやつ。


「はぁ〜あ」


定位置に腰を下ろし寝そべれば、見上げた空を覆う葉がほど好く影をつくってくれる。
目を暝れば直ぐにでも意識が飛びそうだったのに、臨戦体制に入れば案外そうでもなかったり、なんてのはよくある話。
けれどせっかくだから体制を起こすことはしないでいた。
目を暝ってただ風を感じるのも悪くない。
なんとなくの気配に気付いても、簡単に瞼を開かなかったのは、単に面倒くさかったとも言うけれど。


がさがさ


香るものがシャンプーのものだと気付いた事に、変態呼ばわりはちょっと鑑別。
分かっちまうもんは仕方がないと、言って仕舞えばそれまでで。
隣りにいる時、話してる時、すれ違い様にも。
男ってのは結構匂いに敏感なんです。


パキパキパキ、


気付かないフリをしたことに特別な意味はなくて。
後から芽生えたほんの少しのイタズラ心を他意と言われればそれまでだ、けれども。


「黒崎くん?」


はい、なんでしょう。


「お休み中ですか〜?」


まあそんなところです。


「眠ってる…よね…」


いや、半分起きてますが、


「伝えたい事があるのです」


そりゃ一体…何事ですか?


「あ、あのねっ、あの……実はですねっ」


…えらくかしこまってまってんのな。


「ずっと…ずっとね、」


お……おぅ…?










「大好きなのです」










へ??????????!




頭ん中は真っ白というより寧ろ、カラフル過ぎるクエスチョンマーク。プラス、びっくりしたって意味の、あのマーク。
耳に届いた言葉は予想を飛び抜けて反していて。

聞き間違いか…いや、空耳かも…なんてのは、耳を疑う前に気付いた温度の上昇に、あっさりと掻き消されてしまった。


ま、


ま、


ま……




「マジか、よ…」




よぎるのは先の事。これからの。
何を話そうかとか、どう接すればいいか、とか。
全ては初歩的過ぎて阿呆らしい事。
ましてや‘上手な目の合わせ方’なんてのは初歩的の枠から十分にはみ出ていることだろう。


「バーカ」


遠く離れて勿論姿だって見えなくなった。

なのに。

そう言い放つたつきの声が、やたら近くで聞こえた気がした。


「ちくしょ…」


うだつが上がらない危険信号。
もうずっと、点滅状態。
わかってる、このままじゃいれねーって事は。
わかってるさ、動かなければ何も始まらねーって事は、さ。
情けねぇ奴にだけはなりたくない、なるつもりもない。
そうさわかってる。
ガキだからとか、大人だったら、なんてのは関係ない、暗黙のルールってやつ。
男として、これ以上先を越されるわけにはいかねぇんだ。
点滅が、赤に変わっちまう前に。

だからさ、ここは一つ、勇敢なる一端の男として、





男としては…さ、





……………、





…ちょっ、






やっぱ青に変わるの待ってからでも……………、い?チーン








(哀愁)








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とても有り難く頂戴致しますミ



にしても…いい加減カッコイイ一護しゃんが書きたい…(哀)
 
 
 






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