SHORT

□Love story
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十六の年のある舞踏会でのことだった。
オレは挨拶回りを済まし何曲か踊ったあと、壁に寄りかかって休憩していた。
礼服の首もとが息苦しくて仕方がなかったけど、緩めるわけにはいかなくて少し顔をしかめたんだ。

「やあ」

誰にも見られないようにしていたのに声をかけられてビックリした。本当に思いがけないことだったんだ。
振り返るとそいつはにこにこ笑ってた。

「きみも休憩?」
「まあ……」

しかも、オレのことを“きみ”呼ばわりだ。まあ、あとで名前を聞かれたから、オレを知らなかったとわかったけど。
その場でしばらくオレたちは話していた。舞踏会の愚痴とか、その男、バラッドが城下で見た出来事とか。
いつの間にか仲良くなっていて、こっちに従者が来るのを見て思わず舌打ちしてしまったほどに。
別れ際、バラッドは言った。

「宵の刻に城の裏の森――林檎の木の下」






その夜、こっそり城を抜け出し森に走った。
カンテラの揺れる火が照らす範囲は狭くて、森は暗かったけれど不思議と怖くなかった。
恐怖よりも初めて歩いた夜道に興奮していたんだ。

やがて広い場所に出た。
月光が届くためそこは少し明るかった。
その場所のほぼ中央に林檎の木はあってバラッドはその下にいた。

「バラッド!」
「ルーク!出てこられたんだね」「ああ」

悪戯が成功したこどものように二人で笑いあった。
その日話したのは舞踏会での続き。
バラッドがしてくれた話は全てキラキラ輝いていた。

その後、名残惜しくも城に戻ったオレが次の約束に一睡もできなかったのは言うまでもないだろう。



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