SHORT

□さよなら、ロミオ
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その瞬間、時が凍りついた。

「結婚…?」
「ああ。プロポーズ、受け入れてくれたんだ」
「…オメデトさん」

なんとか絞り出せた祝の言葉。
声は震えていなかっただろうか――。
そんな不安がよぎったが、彼が笑顔で「ありがとう」と言ったので、杞憂だったようだ。
いきなりの出来事だったわけではない。
予想はしていた。

(けど、やっぱショックだな…)

彼がプロポーズしたのは、桃色のお姫様。二人が並ぶとまるで、絵本の中に迷い込んでしまったかのように思ってしまうほどお似合いな美男美女。
チラリと自分の中に浮かぶ黒い影。小さく息を吐く。

――大丈夫。まだ『親友』でいれる。

「で?それだけ報告に来たのか」
「え?ああ、うん」
「だったら、さっさと“帰れ”よ。奥さんとこに。副帝と騎士団長の結婚だ。式典の準備だってあんだろ」

まあね、と腰を上げた彼は、見送ろうと近寄ってきたラピードを撫でて自分に背を向けた。ところが扉に手をかけたところで振り向いたかと思うとこう言った。



「君が親友で良かった」



パタンと扉が閉まって、階段を下りる音。窓から見下ろしたところで彼は手を振った。

そして、完全に彼の姿は見えなくなった。

ポタリと膝の上に落ちる雫。

――これは一体なんだろう。

そう思っていると、ラピードが顎をその上に乗せてきた。
ラピードの嫌いな水。早く止めなければ。
でもその雫は止まらない。

「ワフゥー…」
「…ラピード、ごめんな?」

相棒の頭を撫でながら目を閉じた。



そして回顧するのは、輝かしい幼き日々――。



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