SHORT

□幸せになろう
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ガルバンゾ国の王都。その下町で空を見上げる少女が一人。

「あ、エトー!」

少女は名を呼ばれ、走り寄ってくる同じ下町の少年、テッドへと目を向ける。

「テッド兄ちゃん、おはよう」
「おはよう!今日帰ってくるんでしょ?」

少女エトこと、エトワールは空を再び見上げて元気に答えた。

「うん!お空を飛ぶ船で帰ってくるの!」



。oOo゚oOo。oOo゚oOo。



バンエルティア号の中では多くの船員が下船の準備をしていた。
ガルバンゾの王都に初めて訪れるというものが殆どだ。子供たちは大はしゃぎ。
しかし、今回の目的はエステルと騎士二人があの騒動の報告及び、ユーリたちにかけられている王女誘拐の誤解を解くこと。
そのため、エステルは張り切っていた。

「ユーリ!絶対に無罪にしますからね!待ってて下さい」
「あんま、頑張りすぎんなよ?」
指名手配中のため、下船出来ないユーリは今回は留守番組。
エステルの事はフレン、アスベルに託す。勿論、リタも一緒だ。
ジュディスやレイブンに、本来所属しているギルドの首領の少年へ伝言を頼んであるので、心配はない。相棒である『彼』の様子も見てきてくれると言う。

「(後は…)アンジュ」

ギルド、アドリビトムのリーダーである女性の側に行き、声をかける。

「ユーリ。任せておいて」

彼女には事前にある依頼をしていた。
笑顔で応えてくれた彼女に僅かに自分の中にあった不安がすっと消える。

そして、船は王都に到着した。

我先にと駆けていく子供たちに注意をしながら続いて出ていく大人たち。

彼らの背中を見送ってユーリは食堂へと向かった。
食堂には空飛ぶ謎の生物。だが、彼も立派な仲間だ。
家事を一任されている少女たちは買い出しへと行ったようだ。

「ロックス、少しここ借りるぞ」
「ユーリ様。よろしいですよ」
「サンキュ」

許可が降りたため、早速、準備開始。
髪を少し高めに纏めて、黒のエプロンを着る。
食材を並べたところでロックスに声をかけられた。

「今日はどんなスイーツですか?」
「バースデイケーキだ。俺の一番星のな」



。oOo゚oOo。oOo゚oOo。



アンジュは下町に来ていた。
実は、下町に入る前に市民街の人に声をかけられたのだが「下町はゴミしかいないからな、気を付けた方がいい。」そう言われた。その人は善意のつもりだったのだろうが、あまりの言い種に怒りを覚えた。
自分は知っているのだ。下町で育ち、立派に生きている人間《ひとたち》を。
考えると悲しくなってきた。

「気難しい顔をなさって、どうかしましたか」

どうやら、全て顔に出ていたらしい。老人に声をかけられた。

「わしゃ、ハンクスと言います。なにかお悩みですか」
「あ、いえ…。ギルドの仲間に下町出身の女性がいたもので、彼女はここで育ったのかと、思いまして」
「ギルド…下町出身の女性…。もしかしてユーリの仲間ですか」
「ユーリを知っているのですね」
ユーリの名前が出たとたん、老人の顔色が変わった。



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