テイルズ

□断罪の異邦人《ネフェルティティ》
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拘束されたテロリストたちが最後の足掻きとばかりに吠えるのを遠くに聞きながら、エルリック兄弟は走っていた。
二人の前を行くのは主犯格である錬金術師の男。

「もう少し……もう少しだっ!」
そう繰り返し呟きながら男は走った。
目を血走らせ、口許からは涎を垂らしながら走る姿に正気は見られない。
まともじゃない男の様子にエドワードは舌打ちした。

「何やらかす気だよ……」
「兄さん!あれ見て!」

一緒に男を追っていたアルフォンスが男の前方を指差す。
少し広まったそこには天井から床まで錬成陣が画かれていた。
その中心に駆け込んだ男は、倒れ込むように手をついた。
エドワードは錬成を止めるべく、男に飛びかかった。ひどく体力を消耗していた男は抵抗することなく、押さえつけられた。

「ぅ、ぐ……!」
「終わりだ。観念しな」
「ふ……ふはははははは!終わりじゃあないんだよ。軍の狗……」
「兄さん!錬成が止まらない!!」

しかし、錬成はなおも続いていた。男は歓喜と狂気を含んだ目で錬成されるモノを見る。

「生まれるんだ!貴様らを裁く断罪の神っがぁ!?」

叫ぶ男を炎が吹き飛ばす。寸でのところで飛びずさったエドワードは炎の操者を睨む。

「あっぶねーな!大佐」
「おや、いたのか。それより、これはどういうことだ?」
「んのやろ……わかんねぇよ!」
炎の操者、ロイが部下に指示し男を連行させる。
部屋を出る直前、意識を取り戻した男が言った。

「今こそ、その、姿を……自由を冠する、大神よ……!」

その後、壊れたように笑い続けながら連行される男を眉をしかめながら二人は見ていた。

男の背が完全に見えなくなった途端、それは起こった。

一層強く光り、突風が吹き荒れた。咄嗟に目を閉じた二人。暫くの後、アルフォンスの驚きの声に目を開ける。
錬成陣の中央、横たわるそれに二人は目を見開いた。

「な!?」
「女ぁ!?」



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