SHORT

□貴方の分まで泣いてあげる
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※エルリック兄弟がテルカ・リュミレースにトリップしました。



「リター、言ってた資料持って来たぞ」
「相変わらず、早いわね」
「資料の場所は大概覚えてるからな」

今、ユーリたちがいるのは学術閉鎖都市アスピオ。
ザウデ不落宮により封印されていた、災悪『星喰み』が復活し、それを倒す旅路の中だ。
その手段について、調べたいことがあるとパーティの頭脳であるリタが言ったために訪れたアスピオで、エドワードはリタを手伝いを買って出た。自前の頭脳と異世界の学術に対する探究心を持っていたため、彼女も彼を信頼し、申し出を受け入れた。

だが、リタ申し出を受け入れたのはもうひとつ理由があった。

「…あんた、辛くないの?」
「?何が?」

藪から棒に尋ねてきたリタにエドワードは首を傾げた。
本当にわからないといった様子にリタは溜め息をついた。

「アンタらのその旅よ。手がかりが浮かんだと思ったら消えの繰り返し。終わりがないじゃない」

前日、彼ら兄弟の口から聞いた異世界で起こした罪。その罰に奪われた身体を取り戻すための旅。
自分も言えたことじゃないが、と心内で呟く。
自分が追っているあの公式だって似たようなものだ。何年追っても届かない。

その虚しさも含めてもう一度溜め息。

「辛くない訳ねーよ」
「でしょうね。じゃあ、その感情は見せたことある?」
「…」

痛いところを突いたのか、エドワードは黙った。
それはリタには予想どおりの反応だった。
何故なら、彼は仲間に出会う前の彼女に似ていたから。
今なら分かる、それがどんなに愚かなことか。
ああ、何で自分の周りには馬鹿ばかりなのだろう。
彼女は本日三回目の溜め息をついた。

「バッカじゃないの」

あの黒の青年といい、胡散臭いけどいいやつなおっさんといい、裏の読めないあの美女といい…。

そしてこの少年も、

「ホント、ばかっぽい」
「…リタ?」

自分で気付かない振りしていたのに、声の震えも頬に伝う水滴も、彼は気づいてしまった。

「何で泣いてんだよ」
「私は泣いてない!」

彼が困った顔をしている。それを睨んでリタは言った。

「これはアンタが泣いてんのよ!!」

その一言に彼は一度、目を見開いたがすぐに困った顔で笑って言った。

「ありがとな」




(そして、ごめん。俺はお前のためには泣けないよ)


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